今回はFP3級不動産分野の第3回です。
前回は不動産の取引とそれにかかる宅地建物取引業法ついて解説しましたが、今回は関連法規の続きとして借地借家法の解説していきますのでお役に立てば幸いでございますよ。
前回の宅地建物取引業法は主に売買のルールでしたが、今回やっていく「借地借家法」は不動産の賃貸借契約のルールを定めた法律です。
その中身について見ていきましょう。
Contents
土地を借りる権利「借地権」。
まずは土地についてです。
「借地権」は建物の所有を目的として土地を借りる権利のことです。
建物ごと土地を借りる場合は借家権が適用されますのでご注意ください。
借地権には「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があり、内容が結構違っていますのでそれぞれ解説していきます。
借りるほうがめちゃくちゃ有利な「普通借地権」。
タイトルに「借りるほうがめちゃくちゃ有利」と書きましたが、これは本当に借り主が有利な権利です。
私が家を買ったときの不動産屋さんいわく、
とのことでした。
その普通借地権のルールなんですが、
- 契約期間は30年以上。
- 1回目の更新は20年以上、2回目以降は10年以上。
- 借り主が希望し、建物がある状態であればそのまま更新される。
- 貸主は正当な事由がなければ更新を拒めない。
- 契約が終了したら原則更地で返却。
つまり、一旦契約が成立すると借り主が希望する限り建物に住むことができ、地主は自分の土地であるにも関わらず終わりの見えない長期間にわたって自らの土地がロックされることになります。
これは地主にとってはかなりキツイ条件ですよね。
というのも、借地借家法の前身である旧借家法がそもそも住宅事情の改善のために「借り主を保護する法律」だったからです。
ちなみに旧借家法は借り主寄りが過ぎたため「一旦貸したら返ってこない」と言われ、結果的に貸地の供給量は減っていったそうです。
結構地主有利な「定期借地権」。
上の普通借地権(概ね旧借家法と同じ条件)があまりに借り主有利な権利のため、借地借家法になってから新たにできたのが「定期借地権」です。
要は「期間が限られた借地権」のことなのですが、その条件(一般定期借地権)は以下の通りです。
- 契約期間は50年以上。
- 更新なし。
- 終了したら原則更地で返す。
- 特約は書面に残す。
期間は長くなっているものの、更新はないのでちゃんと地主のもとに土地が返ってくるように設計された権利にはなっています。
そして少し前後しましたが、定期借地権には上で説明した「一般定期借地権」の他に、「事業用定期借地権」と「建物譲渡特約付借地権」があります。
「事業用定期借地権」はそのまんま建物の用途が事業用に限られている定期借地権で、
- 契約期間が10年以上50年未満。
- 契約方法は公正証書での契約のみ。
- 返還時は原則更地(一般定期借地権と同じ)。
という条件になっています。
「建物譲渡特約付定期借地権」もそのまんまで、契約期間終了時に建物ごと地主に返す条件がついた定期借地権です。
条件は、
- 契約期間は30年以上(普通借地権と同じ)。
- 契約方法の制限はなし(普通借地権と同じ)。
- 返還時は建物が建ったまま返す。
といった感じになっています。
普通借地権といっしょにまとめて表を載せておきますので比較しながら覚えてくださいね。
普通借地権 | 定期借地権 | |||
一般定期借地権 | 事業用 定期借地権 |
建物譲渡特約付 定期借地権 |
||
契約存続期間 | 30年以上 | 50年以上 | 10年以上 50年未満 |
30年以上 |
更新 | 初回20年以上 以降10年以上 |
更新なし | 更新なし | 更新なし |
利用目的 | 制限なし | 制限なし | 事業用建物に限る | 制限なし |
契約方法 | 制限なし | 特約は書面のみ (電磁記録でも可) |
公正証書のみ | 制限なし |
返還の方法 | 原則更地 | 原則更地 | 原則更地 | 建物付き |
で、基本的に借地権自体は口頭でもOKなんだけど、定期借地権独自の特約というのが決まってて、それを書面に記さなきゃいけないというルールがあるんだ。
でも全然現実的じゃないから「一般定期借地権は書面」って覚えてても差し支えないと思う。
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住居を借りる権利「借家権」。
ここまでは土地を借りる権利である「借地権」について解説してきました。
次は家やアパート等の一室を借りる権利である「借家権」について解説していきます。
借家権は読んで字のごとく「家を借りる権利」のことなんですが、借地権では家は自分のものであるのに対し、借家権は基本的に「土地も家も自分のものではない」ことに注意してください。
そして借家権も借地権と同様、「普通借家権」と「定期借家権」の2種類がありますのでそれぞれ解説していきますよ。
借地権と同様借り主が強い「普通借家権」。
借地権もそうでしたが普通借家権もかなり借り主が強い権利で、大家に正当な事由がない限り借家契約がそのまま更新されます。
なので大家さんが一方的に「出ていってくれ」というのは認められにくい権利となっています。
どうしても出ていってほしい場合は家賃半年分くらいのお金を渡して出てってもらうことが多いようですね。
そして契約期間は1年以上と定められており、契約方法の制限はありません。
原則更新のない「定期借家権」。
一方の「定期借家権」は契約期間が終了した後は原則として更新がありません。
その後も住み続けるためには双方の合意の元で新たな契約を結び直すことになります。
契約期間は何年以上という制限はありませんが、契約で期間を定めることが必要になります。
また、契約は書面の作成が必須となっています(電磁記録も可)。
こちらは貸主の都合のいい年数を定めることで確実に借り主に出ていってもらうことが可能なのですが、貸し主にはいくつかルールがあります。それが、
- 事前に定期借家権である旨を記載した書面または電磁記録を借り主に対して交付する。
- 契約期間が1年以上の場合、期間終了の1年~6ヶ月前までの間に契約終了通知を行う。
というものです。
特約で消せる「造作買取請求権」。
借家権に関連する借り主の権利として「造作買取請求権」なるものが存在します。
借り主が貸し主の許可を得れば家の中に建具などの造作を取り付けることができます。
そして契約終了時にその造作が残っていた場合、借り主は借り主に対してその造作について時価で買い取らせることができてしまうというというものです。
貸し主にとっては、借り主が欲しくて付けたものを買い取らされるのはたまったものではないのは確かです。
なのでこの権利は特約で明記することによって造作買取請求権を排除することが可能になっています。
ほとんど特約で排除されるので実用性はあまりありませんが、借り主にはこういった権利もあるということは覚えておいてくださいね。
「元に戻せ」と一蹴されますのでご注意ください。
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分譲マンションのための「区分所有法」。
ここまでが借地借家法の内容でしたが、ここからは集合住宅の一部分を買ったときに適用される「区分所有法」について解説していきます。
分譲マンションなど「建物自体を買ったわけじゃなくその一部の住戸を買った場合」などが当てはまります。
「区分所有法」はかいつまんで言うと、「みんなで暮らすための最低限のルール」といった感じです。
区分所有法自体についてはこんなイメージで見ていけば大丈夫かと思いますよ。
「区分所有権」と「敷地利用権」。
集合住宅の住戸を買った人についてくる権利には2種類あり、それが
- 区分所有権
- 敷地利用権
です。
まず前提として分譲マンションには、買った人固有スペースである「専有部分(各部屋など)」と、買った人みんなが出入りする「共有部分(エントランス、エレベーターなど)」が存在します。
専有部分の所有権を「区分所有権」といい、専有部分を所有するために建物の敷地(共有部分を含む)を利用する権利を「敷地利用権」といいます。
そして、この2つの権利は必ずセットで扱われ、別々に処分することは禁止されています。
これを「分離処分の禁止」といいます。
なので「そんな訳のわからないことはするな!」ってことです。
マンション固有のルール「規約」。
マンションそれぞれのルールとして「規約」というものがあります。
あとは管理費とか修繕積立金の金額も規約で定めたりします。
この規約の決め方が区分所有法である程度定められているのでそれについても解説していきますね。
規約を新たに決めたり変更するためには「集会」を開いて決めることになっています。
集会での決議は「区分所有者」および「議決権」によって決められます。
決議を通すには両方が一定以上の賛成を取らないといけないよ。
この決議は大まかに分けて3種類あります。
- 普通決議(一般的な事項)
- 特別決議(重大な事項)
- 建替の決議
まず、管理組合の活動報告や次回役員の選任などの一般的な事項に関しては「普通決議」で決められます。
こちらは区分所有者および議決権の過半数で決議されます。
一方、管理規約の変更や管理組合の解散、共用部分の変更などかなりヘビーな内容に関しては「特別決議」が必要になります。
こちらの決議には区分所有者および議決権の3/4以上が必要になります。
そして建替に関してのみ、決議には区分所有者および議決権の4/5以上が必要です。
建替はかなりハードルが高いというイメージで覚えてください。
表にまとめておきますので比較しながら覚えてくださいね。
普通決議 | 特別決議 | 建替の決議 | |
内容 | 一般的な事項 (活動報告、 次回役員選任など) |
重大な事項 (規約変更・創設・撤廃、共用部分の変更など) |
建替 |
必要賛成数 | 過半数 | 3/4以上 | 4/5以上 |
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借地借家法と区分所有法のまとめ。
- 普通借地権は住居不足の時代に作られたものなので借り主が超有利。
- 借り主が有利過ぎるのを少し是正するためにできたのが定期借地権。
- 定期借地権には一般・事業用・建物譲渡特約付の3種類がある。
- それぞれの要件を覚えておこう。
- 借家権も借り主がかなり強い権利。
- なので同様に定期借家権ができた。
- 集合住宅の最低限のルールが区分所有法。
- 区分所有権と敷地利用権はバラ売り不可。
- 集会での決議の種類と決議要件をしっかり覚えよう。
こんな感じです。
普通にアパートを借りるときとかには気づきにくいですが、法律としては借り主がかなり強くなるように設計されています。
退去時や更新時に貸主側の不動産屋が勝手なことを言ってきたりすることは結構あるのですが、この辺の法律を勉強しておくと理不尽な要求は意外と簡単に跳ね返せたりするのでここを深堀りして勉強するのは試験に関係なくおすすめです。
「法定更新でいいの?」って電話してあげたら慌てて送ってきたことあります。
更新日まで時間がなかったので支払期限を2ヶ月延長してもらいました。
そういうとこだぞ?
どうしても法律絡みはややこしい・紛らわしい・とっつきにくいと三拍子揃って嫌われがちな分野ではありますが、特に不動産関係は覚えておくと得することも多いのでしっかり覚えておくことをおすすめしますよ!
以上です!