実際に自宅を購入して早数ヶ月。
中年なのに地獄の35年ペアローンを組んでただいま絶賛返済中です。
今回は持ち家派のラスボスである住宅ローンの、繰り上げ返済をすべきか否かについて私見を書き連ねていきますよ。
Contents
数字だけ見れば繰り上げ返済はしないほうがいい。
↑結論だけ言ってしまうとこれが全てになってしまいます。
その理由としては、
- 住宅ローンの金利はあらゆる借金の中でもトップクラスに低い。
- 繰り上げ返済に回す資金を運用したほうが儲かる。
- 手元の流動資金を確保できる。
- 残高がたっぷりあろうが死んだら団信でチャラ。
というのが挙げられます。
まずはこれらについて見ていきますよ。
住宅ローンは借金としては破格の低金利。
まず金利についてですが、政府の低金利政策により住宅ローンの利率は現在とてつもなく低いです。
変動金利であればどの銀行でもだいたい1%以下に設定されており、ネット銀行では0.4%程度のところもあります。
我が家ではネット銀行で「がん100%団信(+0.2%)」を付加して0.61%で借りています。
この場合残高1000万円あたりの年間利息は61,000円です。
5000万円借りても30万そこそこの利息で済んでしまいます。
これは裏を返すと、「繰り上げ返済で残高を1000万円圧縮しても年間6万円くらいしか浮かない」ということです。
これのために手元の流動資金を投じてしまうのは正直もったいないです。
また、住宅ローンは個人が行える借金の中でトップクラスで金利が低いです。
私の知る限りこれより低い利率の借金は利子付きの奨学金くらいです。
例えば手元の300万円を使って繰り上げ返済をしたとします。
そのおかげで手元の資金がなくなり、車の買い替えのために300万円のマイカーローンを組むとしたらどうでしょうか?
マイカーローンは安いところでも0.85%以上ですので、住宅ローンからわざわざ金利の高いマイカーローンに借り換えたのと一緒になります。
であれば当然住宅ローンの繰り上げ返済をやめてそのお金で車を一括購入したほうがお得ということになります。
もし繰り上げ返済をしたあとに何らかのまとまったお金が必要になる可能性があるとすれば、その繰り上げ返済を待ったほうが金利の面で得であることは間違いありません。
先を見ずに繰り上げ返済をしてしまうことは愚策と言っていいでしょう。
手元資金で投資をする≒投資資金を低金利で借りている。
次に挙げた「繰り上げ返済に回す資金を運用したほうが儲かる」ですが、こちらも現状の低金利では無理に繰り上げ返済をしても恩恵が得られにくいというのが元になっています。
インデックスファンドで積立運用をすれば、もちろん市況によって元本割れの可能性はありますが、長期的に見れば平均利回りで住宅ローン金利を下回るというのは考えにくいです。
もちろん全てを投資に回すのはリスクがありますし、預金でもいくらか持っておく必要もあるでしょう。
しかしせっかく低金利でお金を借りているのですから、その金利を上回る投資ができるのであればこれを利用しない手はありません。
仮に100万円を繰り上げ返済したあとに投資に目覚め、100万円を新たに借り入れようとしても住宅ローンと同等の金利条件でお金を貸してくれるところはありません(というか投資のために個人に融資をしてくれる銀行はないと思います)。
つまり住宅ローンの残高がある状態で手元資金を投資に回すことは、投資のためのお金を超低金利で調達できているのとほぼ同義という見方もできますね。
これを自ら放棄してしまうのは実にもったいないと言えるでしょう。
一番効率的な方法としては、「繰り上げ返済に充てようと思っている毎月の余剰資金の一定額をその都度投資に回す」というやり方です。
まとまる前に投資に回すことで長期の積立投資を行うことができますので、一括投資で陥りがちなまとまった高値づかみを回避することもできます。
つみたてNISAなんかに回してもいいかも知れませんね。
もちろん現預金での貯蓄はある程度あったほうがいいので、うっかり全額を投資しないようにだけは気をつけてくださいね。
スポンサーリンク
何かあったときに頼れるのは手元の現金。
例えば急な怪我や病気でお金がかかる、子供が留年して学費が余計にかかるなど、急にまとまったお金が必要になったときに手元の現金がないと困りますよね?
うっかり手元のお金の大部分を繰り上げ返済に回したあとにこんな事態に陥ってしまったら、ない袖は振れませんので結局どこかでお金を借りるしかありません。
そして住宅ローンより金利の安い借金はほぼありませんし、親戚に借りるとなると後々揉める火種になる可能性もあります。
ですので、無理に繰り上げ返済をせずに不測の事態に備えて手元資金を残しておくほうが何かと安心です。
もちろん、繰り上げ返済を行った上で万一に備えた資金を確保できるのであればそれはそれでいいと思います。
まあそんな人は繰り上げ返済をするしないで悩む必要はありませんのでこの記事では割愛しますよ。
ちなみにこれは繰り上げ返済だけでなく頭金にも言えることです。
借金の総額を減らしたいからと無理して手元資金の大部分を頭金として支払うことは、何かあったときの備えを放棄してしまうことになりますので、これから住宅ローンを組むという方は頭金の金額も慎重に検討しましょうね。
いずれにせよ生活する上である程度の流動性資金は必要なものですので、3ヶ月~半年分くらいの予備資金は預金もしくは換金性の高い資産で持っておくことは必要になります。
無理して手元資金を逼迫させるようなことはなるべくしないほうがいいでしょう。
残高をなくすことは団信の補償を消してしまうこと。
住宅ローンを借りている人のほとんどは団信に加入しています(フラット35は任意なので加入していない人もいます)。
この団信は結構強力な補償で、債務者が亡くなってしまった場合にローン残債をゼロにしてくれる遺族にとって大変ありがたい保険です。
住宅ローン残高が3000万円あれば3000万円の、1000万円であれば1000万円の生命保険に加入しているのと同じことなんですね。
仮に3000万円の残債があったとして、もし1000万円の繰り上げ返済をしたとしたらその瞬間に団信の補償額は2000万円に下がってしまいます。
もちろん支払った分だけ先の利息負担は減りますが、同時に亡くなった際の保険金相当額も下がってしまうことになります。
もし繰り上げ返済をして次の日に死んでしまったら、残債無しで家族に家を残せることには違いありませんが、繰り上げ返済をした分のお金は返ってくることはありません。
これって結構もったいなくないですか?
もちろん人間いつ死ぬかというのはわからないので利息の削減効果のほうが大きい可能性だってあります。
しかし先にも述べたとおり現在は破格の低金利が続いています、
年間数万円(100万円あたり)の利息圧縮よりも、何かあったときの保険料と割り切って利息を払ったほうがお得と言っていいと思います。
スポンサーリンク
この他にも、借入10年(条件付きで13年)以内であれば住宅ローン控除の金額が変わるなどの要因もあります。
いずれにせよ大抵の場合、現在の低金利政策下では繰り上げ返済はしないほうが数字の上では有利というお話でした。
繰り上げ返済のメリットは圧倒的な精神的安定。
では繰り上げ返済は絶対にしないほうがいいのかと言うと必ずしもそうではないのが難しいところです。
数字以外の部分では繰り上げ返済にもメリットはあり、そのメリットを享受できるかどうかはその人の性格に大きく関わってきますのでその辺についても触れておきますね。
無借金の安心感は無敵感に近い。
繰り上げ返済のメリットいえば何と言ってもこれにつきます。
数字上でのお得感というのはなくても、「家を買ってできた膨大な借金がなくなった」という安心感はある種の無敵感すら出てくるかも知れません。
月々数万~十数万円のローンから開放される喜びは何物にも代えがたいという方も多いでしょう。
今まで月々8万円のローンを返済していた人が繰り上げ返済で完済した場合、今後住居費がただになる上に8万円相当の家に住み続けることができるようになるわけですから、その安心感はすごいことでしょう(メンテナンス費はかかりますが…)。
完済しないにしても、返済額軽減型の繰り上げ返済を行うことで月々の返済額をへらすことができます。
圧縮後に返済額が5万円まで下がれば「家賃にしたら8万円の家に5万円で住めている」という安心感を得ることができるでしょう。
理由はどうであれ借金というのは精神的に大きな負担を与えます。
数字上はお得ではないとわかっていても、安心を買うという意味では繰り上げ返済にも大きなメリットはあります。
未来のキャッシュフローが改善される。
これは上で述べたのと少しかぶりますが、繰り上げ返済は「ローンの返済期間を短縮する」または「月々の返済額を減らす」効果をもたらします。
返済期間短縮型の繰り上げ返済を行った場合、35年ローンだったものを32年ローンに短縮することでその3年間は予定より支出が減ることになりますよね。
上の例だと予定では8万円だった支出が急にゼロになるわけですから、その時が来たら
と喜ぶこと請け合いです。
一方、返済額軽減型の繰り上げ返済の場合はその効果を翌月の支払いから得ることができます。
繰り上げ返済を行った翌月から完済するまでの間に渡って少し支出が減るわけですから、毎月の生活に少し余裕が生まれることにはなるでしょう。
つまりどちらの場合も、将来のキャッシュフローを手元のストックで買うということになります。
もちろん繰り上げ返済をすることで手元のストックは失われますので、「現在のまとまったお金」と「将来の収支フロー」でどちらがより安心に寄与するかということを考えた上で決めるようにしましょうね。
スポンサーリンク
気持ちに関わらず繰り上げ返済をすべきという人もいるにはいる。
上記の通り繰り上げ返済というのは、手元の資金で「安心感」と「未来のキャッシュフロー」を買うということなのですが、中には「できる限り繰り上げ返済はしておいたほうがいい、というか絶対しろ」という人も存在しますので、それについても触れておきます。
高い固定金利で住宅ローンを借りた人は繰り上げ返済もアリ
まずは「繰り上げ返済しておいたほうがいいかもね」という人についてです。
こちらは、「すでに高めの固定金利で借り、ある程度返している人」が該当します。
今でこそ0.5%とかの超絶低金利で住宅ローンが借りられますが、少し前に借りた人とかでは3%の固定金利で借りているという人もいるかも知れません。
運用で3%というのはできなくはありませんが、元本割れリスクを考えるとそれほど旨味があるわけではありません。
それくらいの金利で借りている方は住宅ローン控除もおそらく終わっているでしょうから思い切って繰り上げ返済をしてしまうのもありかも知れません。
基本的にこういった場合には「金利の低い金融機関で借り換え」というのが第一の選択肢になるのですが、
- 年齢、または団信の問題で新たな住宅ローンが組めないかもしれない。
- 融資事務手数料2.2%!?ふざけんな!
などの理由で借り換えができない場合もあります。
こういった場合には繰り上げ返済をして利息の負担を減らすというのは選択肢として有力です。
ただし団信に加入できない健康状態であれば、将来的に入院などでまとまったお金が必要になる可能性も高いです。
その際にどの程度の資金が必要になるかなど、将来の懐具合を考えた上で慎重に判断してくださいね。
お金を貯められない人は繰り上げ返済しよう!
てかその無駄遣いとしっかり向き合うんだ!
こちらは絶対に繰り上げ返済をしたほうがいいパターンです。
世の中にはお金を貯められないタイプの人は一定数います。
小金が貯まってくると気が大きくなって無駄遣いをしてしまうような人がこれにあたります。
「お金が貯まらないのに繰り上げ返済」というと矛盾に聞こえるかも知れませんが、今は多くの金融機関で一部繰り上げ返済であればネット上で簡単に、しかも手数料なしで行うことができます。
これを利用して、「給料が入ったらその一部を繰り上げ返済」を行うのがいいでしょう。
いわば無駄遣いしないように先取りして使ってしまうということですね。
こうしておけば繰り上げ返済分が残債から減りますので、最悪家計が破綻してもオーバーローン状態の可能性を毎月少しずつ減らすことができます。
ただし、これに該当する人については繰り上げ返済をしたほうがマシになるというだけであって、繰り上げ返済の有無に関わらず早晩破綻する可能性が高いです。
無駄遣いを減らすための繰り上げ返済をしながら並行して自身の金遣いについて向き合うべきでしょう。
そしてこういった人が住宅ローンを組んでいる場合、往々にして住宅ローンの借入金額自体に無理がある可能性が高いです。
借りられる金額は返せる金額というわけではないので、身の丈に合っていない物件を買ってしまっているかもしれません。
もしもあなたがこういったタイプだと感じたら、早急にマネープラン・ライフプランを練り直すことを強くお勧めします。
スポンサーリンク
繰り上げ返済をすべきかどうかの話のまとめ。
結局実利を取るか安寧を取るかの判断になる。
ちょっと話が逸れてしまいましたが、現況の低金利下においての繰り上げ返済の要否というのは結局借金を圧縮する安心感にどの程度の比重を置くかということにかかってきます。
もちろん借金なんてなければないほうがいいですし、あるとしても金額が大きいのと小さいのでは小さい方が安心感は大きくなります。
しかしその安心感を得るためには、手元の資金という対価を払わなければいけないというのが難しいところです。
手元の資金があること自体の安心感というのもそうでしょうし、その資金を運用するという選択肢をむざむざ捨てるのももったいないことなのは確かです。
無借金の安心感がそれに勝るのであれば繰り上げ返済はすべきでしょうし、そうでないと思えば手元に資金を残すなりある程度流動性の高い投資商品で利回りを得るほうがいいでしょう。
1つNGがあるとすれば、手元資金の流動性を著しく下げる金融商品を買うことです。
例えば「一時払い外貨建年金保険」などですね。
これは利回りも悪い上に途中解約で元本割れします。
資金の流動性を下げるだけで特にメリットはありませんので、繰り上げ返済の相談をしに行った際にこういった商品を勧められても乗っかってはいけませんよ。
- 繰り上げ返済をしないなら流動性は死守。
- 繰り上げ返済をするなら借金圧縮を第一優先。
この方針だけはしっかり持って後のライフプランをしっかり作っていきましょう!
以上です!