ブラック企業はその存在だけで違法なのですが、今回お話するのはもっとわかりやすい違法行為、税理士が雑に脱税しているのを知ってしまったお話です・
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前提:青色事業専従者って何?
よくわからない方のために、「青色事業専従者」について軽く説明しておきます。
生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払うことがあります。これらの給与は原則として必要経費にはなりませんが、次のような特別の取扱いが認められています。
- 青色申告者の場合
一定の要件の下に実際に支払った給与の額を必要経費とする青色事業専従者給与の特例- 白色申告者の場合
事業に専ら従事する家族従業員の数、配偶者かその他の親族かの別、所得金額に応じて計算される金額を必要経費とみなす事業専従者控除の特例(注) 青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人又は白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。
国税庁HPより
かいつまんで言うと、
- 自営業(個人事業主)は家族に手伝わせることあるでしょ?
- 手伝ってもらったらお金払うこともあるでしょ?
- 基本それは給料として経費で落としちゃダメ。
- でも条件を満たせば特別に給料分経費にしていいよ。
ということです。
青色申告と白色申告の違いは、青色のほうが法人みたいにキッチリ申告しなければいけない代わりに白色よりも控除などが優遇されるイメージです。
私が働いていたブラック税理士事務所の所長も個人事業主でしたので、この青色申告を行って専従者給与を経費として計上していたわけです。
机の上に置きっぱなしの確定申告書。
私がブラック税理士事務所に勤めてから2回目の確定申告時期のことでした。
入ったばかりの頃は、ボスまたはボスの奥さんが9時までに鍵を開けていて私が9時に出勤するシステムでした。
しかし勤めて半年くらいたったあと事務所の鍵を渡されました。
それからは9時に出勤するのは私だけ、奥さんの出番はなくなり、ボスは当たり前のように午後出勤するようになりました。
辞める間際は午前中寝てたけど。
そんな中、書類を置きにボスの机のところに来たときに、ボス自身の確定申告書が目に入ってきました。
ボスも3月15日までに確定申告を終えなくてはいけないので、個人事業主の顧客と同時並行で進めていかなくてはいけません。
従業員を奴隷扱いしているくせに自分の収入がわかる書類を見えるところに置いておく無神経さに怒りすら覚えましたが、ビリビリ破るわけにもいかないのでとりあえず見るだけ見てみました。
えっ?奥さん専従者だったの?最近ほとんど見てないけど?
確定申告書の所得金額などについては、守秘義務もありますので細かくは触れません(というか覚えていません)が、まあ税理士として独立しているのであればこのくらいはもらうだろうという金額だったような気がします。
それよりも驚いたのは青色事業専従者の欄にボスの奥さんの名前が書かれていて、それなりの金額が給与として計上されていたことです。
上でも触れましたが、奥さんが事務所に顔を出していたのは私が事務所の鍵を持つようになる前で、しかもボス自身が客先直行で事務所を開けられないときだけでした。
頻度にしたら週1回かその程度です。
私が出勤したら入れ替わりで帰るなんていうこともしょっちゅうありました。
つまりボスは週1回くらい(しかも新人が入った当初半年間)しか事務所に顔を出さない配偶者を青色事業専従者として登録し、給料を経費で落としていたのです。
そこはYさんから言質取ってる。
奥さんは税務の知識はほとんどなく、話を聞いていても働いている感じは受けなかったので、言質を取るまでもなくその線はなかったと思います。
でなきゃ第2回の話みたいなことにはなりませんからね。
話は戻りますが、その専従者給与の金額はもちろん私の給料よりもだいぶ多かったです。
こちらも詳しい金額は覚えていませんし、覚えていてもそこまで晒すつもりもないのですが、おおよそ週1回の出勤に見合う金額ではありません。
そのときに思い出したのですが、奥さんの給与についてはYさんも以前に文句を言っていたことがあります。
正直やる気削がれる。
私の給料どころか古参のYさんよりもかなり多い金額が支給されていたんですね。
その時は聞き流していましたが、現実を目の当たりにするとその悔しさもよくわかります。
おそらくYさんも私と同じようなシチュエーションでボスの申告書か何かを見たことがあったのでしょう。
そしてその給料が実際に奥さんの手に渡っていたかどうかについても私は怪しいと思っています。
Yさん曰く、奥さんは「心が風邪を引いている」状態で、ちょっと病んでいる感じの人です。
その奥さんが税理士である夫を差し置いて、普通の勤め人と同じだけの給料を自ら管理させてもらえるとは思えないからです。
そして、この事務所は今どき(当時ですが)珍しく給料は手渡しです。
つまりお金の流れを追おうとしても従業員全員手渡しですので振込などの記録は一切残りません。
ですので自分の口座からそれっぽい金額を引き出しさえすればちゃんと支払ったと言い張ることが可能です。通るかどうかは知りませんが。
そして今これを書いていて思いましたが、我々の給料すら水増しして経費計上することも可能だったでしょう。
我々が受け取る給与明細も複写なしの手書きでしたからね。
何かまた書いていて腹が立ってきました。
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みんなやっていることなんですかね?脱税でしょ?
週1回未満勤務の配偶者に誰よりも高い給料を出して経費で落とすなんて脱税だろうと思ったので調べてみました。
青色事業専従者の要件はこんな感じです。
青色事業専従者給与として認められる要件は、次のとおりです。
(1) 青色事業専従者に支払われた給与であること。
青色事業専従者とは、次の要件のいずれにも該当する人をいいます。
イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。
(2) 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)までです。
この届出書には、青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、支給期などを記載することになっています。
また、専従者が増える場合や、給与を増額する場合など、届出の内容を変更するためには、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく納税地の所轄税務署長に提出していること。
(3) 届出書に記載されている方法により支払われ、しかもその記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。
(4) 青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。
なお、過大とされる部分は必要経費とはなりません。国税庁HPより
これもかいつまんで言うと、
- 15歳以上の家族。
- 1年のうち半年以上は専従で働いてないとダメ。
- 事前に提出した届出書の人。
- 実際に払った金額だけ。
- かつ届出書に書いた金額の範囲内だけ。
- 不当に高い金額は認めない。
- 超えた額は認めない。
といった感じですね。
私がいた事務所の場合はどうでしょうか。
要件 | 判定 | 備考 |
15歳以上の家族 | ○ | どう見てもオバサン |
6ヶ月を超える専従 | △ | 主婦なので兼務はしていないがろくに働いていない |
届出書に記載 | ○ | 税理士が届け出を怠るとは考えにくい |
実際に支払った金額 | △ | 実際に支払いがあったかは不明 |
労務の対価として相当か | × | 時給にしたらウン万円。 |
要件の「専ら従事する」というのを満たしているかどうかはよくわかりませんが、
という主張もできなくはないかもしれません。
まあとりあえずここの時点で黒と判断するのは早計ですが、まず間違いなく引っかかるのがこちら。
(4) 青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。
なお、過大とされる部分は必要経費とはなりません。国税庁HPより
「労務の対価として相当であると認められる金額」しか経費にしてはいけない事になっていますが、ここの事務所では明らかに不当な金額が専従者給与として計上されていました。
ボスの奥さんは、半年間だけ週に1度くらい顔を出して、長くて数時間いるだけで帰っていきました。
労働時間を多めに5時間と見積もってもその1年間で働いた時間は
5時間 × 26週 × 1日 = 130時間
となり、こちらも多めに時給2,000円で見積もっても年間26万円程度しか認められないことになります。
もちろんこの事務所で時給2,000円も出ている職員はいませんので、税務調査が入ったときに実際に認められる金額はもっと低いでしょう。
何なら一切の勤務実績を認められない可能性もあります。
記録なんて一切とっていませんからね。
というわけで私がいたブラック税理士事務所の青色専従者給与については、少なくとも労務の対価として認められるような額ではないことがわかりました。
税務調査の際に突っつかれて5年分くらいの延滞税とか重加算税とか払わされればいいんですよ。ざまあ。
もう脱税で逮捕でいいんじゃないですかね?
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ブラック税理士事務所はいろいろブラックまとめ。
- 青色事業専従者の給与は支払額を経費計上できる。
- でも実際の労務対価に限る。
- 配偶者を専従者登録すること自体は普通。
- でも奥さんほとんど仕事してないじゃん。
- ブラック税理士事務所では明らかに過大な経費を計上。
- さっさとバレて追徴課税喰らえばいいのに。
こんなところです。
これはブラックに共通することかと思いますが、経営者が自分個人のことしか考えてないんですよ。
もしくは事業と個人の境目が見えていない状態。
なのでそこで働く人間は目の前の電卓と一緒で安価なツールくらいにしか思っていません。
そして経営者本人がそこそこバカなので、新人が入ったらスタートから絞りまくって短期で使い潰します。
そして普通の従業員が辞めていき、また新人に一から教え直す時間がコストであることに気づかないわけです。
そして残るのは経営者の首根っこを掴むことに成功した聖域保持者だけ。
そして事務所内の法律は自分だと思っていますので、その中身で悪さをしようともそれが正しいと勝手に解釈します。
違法残業も違法申告もその範囲内なんでしょうね。
そしてそれを職員に見られてしまう詰めの甘さにも呆れます。
こうやって他人に厳しく自分に甘いブラック経営者がのさばっていくわけです。
もうホント潰れてください。全部。
私は幸いにも3年弱でこのブラック事務所から逃げ出すことができましたが、働いている間は常に悩んでいました。
辞めてしまったら就職活動を始めなければならない、そして今よりいい職場になるかわからない。
ずっとそんなことを考えていました。
しかしこれだけははっきり言えます。
ずっと悩んでいるような職場だったらすぐにでも辞めたほうがいいです。
実際私はいくつかブラックにも当たってしまいましたが、この事務所をやめたあとに普通の会社に就職することができました。
1回で当たりを引けないかもしれませんが、ダメならもう一度転職すればいいんです。
ブラックじゃない企業も求人は必ず出しています。
就職活動中の生活費なんて長期化さえしなければ意外と何とかなります。
辞めようとしたときに
回らなくなって責任取れるのか云々。
などと上司が言ったとしてもそんなものは全て無視して構いません。
法律上は通知して2週間経てばバックレても何ら問題はありません。
従業員が辞めたあとのマネジメントの責任は会社にあるんです。
そのための2週間なんですから。
もしあなたが現在ブラック企業で働いているのなら、体や心を壊す前に辞表を出しましょう。
そして2週間経てばただ消えるだけです。それで自由になります。
壊れそうなら先の心配よりも今の心配をしてください。
新しい人生の1歩を踏み出してみませんか?