国内全ての小中学校で、各生徒・児童1人1台のパソコンもしくはタブレットを使えるようにするという政府方針が発表されました。
今回の記事はこの件に関しての愚痴記事です。
元記事が消えてしまいましたが、政府方針として全国の小中学校に対し、1人1台でパソコンもしくはタブレットを使えるように無償配布することが発表されました。
正直この方針がこの先有効に活用される未来が全く見えません。
金だけかかって頓挫するのは私のような素人のおっさんでも容易に想像がつきます。
というわけでこの方針に対しての文句をまるっきり個人の主観で書いていきますよ。
Contents
教育現場にPCを取り入れること自体は悪いことではない。
最初に断っておきますが、教育現場にPCやタブレットを取り入れる事自体には個人的には賛成です。
早いうちからIT機器の扱いを覚えておくことは決して悪いことではありません。
パソコンが全く使えないおじさんが実権を握っている職場が悲惨であることを鑑みれば、子供に半ば強制的に使わせる機会を増やしてそういうおじさんを将来的に減らす試みはむしろいいことであると言えるでしょう。
あくまで私の考えですが、小中学生にパソコンはまだ早いということは決してなく、触れさせるのは早いほうがいいと思っています。
しかしそれでも、今回の政府方針を聞いても絶対に良くなる未来が見えてきません。
その理由をこれから書いていきます。
繰り返しますが今回はそれだけの記事です。
特に得るものはないと思われますのでご了承の上読み進めていただければ幸いでございますよ。
「PCまたはタブレット」ってどっちでもいいのかよ問題。何を学ばせたいの?
まず最初から突っ込まざるを得ませんが、「PCまたはタブレットのどちらか」とかテキトー甚だしいとは思いませんか?
極端な話をすればPCもタブレットも見かけや使い勝手は違えどIT端末の一種には違いありません。
しかし、学んだ先のことを考えるとPCとタブレットでは用途がある程度分かれて行くことになりませんかね?
例えばPCを学ばせるのであれば、EXCELやWord、プログラミング学習などを視野に入れて授業をやる機会があります。
一方、タブレットでそのような使い方はあまりしないでしょう。
タブレットは携帯性に優れているのでメモ帳や手帳代わりになったり、教科書やノートの電子化が視野に入ってきます。
PCでもできないことはないですが利便性には劣りますし、わざわざ学校で学ぶようなことかという気もします。
個人的には、社会に出て「キーボードとか触ったことありません」という新社会人を減らすためにはタブレットよりもPCのほうが後のためになるとは思います。
タブレットを使うなら紙の教科書なんかは原則廃止して全教科書を電子化くらいの勢いがほしいですね。
利権があるので絶対やらないでしょうけど。
いずれにしても、「PCかタブレットのどちらか」なんて言っている時点で、先のことについては何も考えていないのは丸わかりです。
方針の発表をしてしまうくらいならその辺まで詰めてからにしてほしかったですね。
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予算4000億円で足りるのか問題。
この方針で投入される予算は4000億円ほどと言われています。
全国の小5から中3までの人数はおおよそ500万人くらいですから、1人頭8万円位になりますね。
おそらく導入のイニシャルコストとしては、アホみたいなハイスペック機を導入したり、アホみたいな中抜きをしたりしなければ足りるでしょう。
しかしかかる費用はこれだけではありません。
端末同士の情報を共有するネットワークや、時にはインターネット環境も運用上当然必要になってくるでしょうし、故障時の修理費用やメンテナンスもタダではありません。
当然イニシャルコストの他にランニングコストが発生しますので、予算としてどれくらいのランニングコストを見込んでいるのかも不明です。
そして端末についても一度買えば何十年も使えるというものではありません。
特にIT機器は製品や環境の進化が速いため、10年も保たずにゴミスペックになる可能性が極めて高いです。
ゴミスペックでは運用上の弊害も出てきますし、下手をすると過去の遺物になってしまって学んだことが役に立たない時代になる可能性も否定できません。
そうなってくると他の備品よりも速いスパンで入れ替えの必要が出てくるわけです。
これ4000億円で足りますか?
まさか何度も4000億円予算計上するつもりですかね?
もちろん端末にかかる費用を抑えて浮いた分をその他の費用に充てればとりあえずは足りるかもしれません。
おそらく政府も数年間のランニングコスト込みでの4000億円という数字を出しているのでしょう。
ただ学校の備品は無駄に高くなりがちです。
導入段階でゴミスペックの端末代だけで4000億円を使い果たしてしまいそうな気がするのは私だけでしょうか?
いずれにしても買い替えを行うことを前提としたら総額で4000億円というのはありえない話かと思います。
中国製端末入れるわけにもいかないだろうし。
パソコン使えないおじさん先生が若手に丸投げするんじゃないの問題。
この先全生徒にパソコンもしくはタブレットを1台無償貸与することになったとして、学校でそれを教える人はどうするのでしょうか?
IT端末の授業はそれができる先生(技術教科担任など)が受け持つことになるので授業はそれでいいでしょう。
しかし、全員が1台持つということになるとそうはいきません。
専門の授業だけで使うのであれば1人1台など不要で、せいぜい2クラス分の端末を用意すれば済む話です。
ということはパソコン授業以外の学生生活の中である程度活用が見込まれているということになります。
教える側にいる先生方の中にはパソコンの授業なんて全く受けていない人も多いわけです。
さらにその中には、テスト問題すら手書きでやっている先生もいるでしょう。
一般企業でさえパソコンが全く使えないことをいいことに、パソコン系の仕事を若いからという理由でぶん投げてくるおじさんは存在します。
学校という閉鎖空間の中では一般企業のそれよりもハードな丸投げが起こりうるというのは想像に難くありません。
パソコンを使いたくない手書き至上主義のおじさん先生が、新任の若い先生にパソコン周りの仕事を丸投げするのが常態化していく学校が少なからず出てくるような気がします。
それを防ぐには全教員がまとまった時間をとって研修を受けるなどの準備が必要ですが、それも予算に含まれているのかどうか、そもそもただでさえ忙しい教職員に研修のための時間が取れるのかどうか怪しいところです。
いずれにしても新しいことをするにあたり、パワーバランスによって割を食う先生が必ず出てくることになると思います。
最悪パソコンでの提出物を一手に引き受けさせられる奴隷のような若手教師が量産されるかもしれません。
どうせ使えないだろ問題。
考えられる最悪のケースとしては、買うだけ買ってろくに使わないパターンです。
残念なことですがこれはそれなりの確率で発生しうると考えています。
私の体験談で状況は違いますが例を1つ。
私が通っていた高校には、「オーラルコミュニケーション」という英語の授業がありました。
日本の英語教育は実践的でないというのは昔から言われてきており、それを打開するために定められたものと推測されます。
そしてもちろんそのオーラルコミュニケーションの授業のための教科書や副教材を買わされることになります。
そして実際に授業が始まり、最初のオーラルコミュニケーションの授業で教科担任が言い放った一言は、
というものでした。
そして実際に使った教科書は通常英語の副教材として買わされた文法の教科書。
つまり(おそらく)国策で設定されたオーラルコミュニケーションの授業のコマを使って文法の授業を増やしただけ、というオチです。
考えてみれば口頭英語なんて実際に習っている先生は1人もいないわけで、いきなりオーラルの授業やれとか言っても無理でしょうし、学校としての苦肉の策だったのかもしれません。
おそらくですが教えられる教員のいない全国の小中学校では、上記のように体裁だけ取り繕って実情が伴わないケースが相当数出てくるのではないでしょうか。
英語よりも授業として馴染みのないIT端末の活用ですから、上述のオーラルよりもこういう事態が増えそうな気がします。
とりあえず無償配布だから配ってはみたけど教える人がおらず教える気もないために生徒の自宅でホコリを被るノートやタブレットが増えるだけ、ということにだけはなってほしくないものですね。
これに税金4000億円とか狂気の沙汰もいいところです。
本当の目的は国産企業に対する特需でのテコ入れなだけなのかもしれませんが、「だったら子供をダシにして税金でやるなよ」という話です。さすが汚い。
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有効活用するために必要な準備、できるわけない問題。
上記の問題を発生させず、使う税金が無駄にならないようにしっかり子どもたちにITスキルを身に付けさせるためにはそれなりの準備が必要です。
私が思いつく限りではありますがいくつか挙げてみます。
- パソコンやタブレットを使って何をさせたいのか明確にする。
- 学校によってどちらが必要なのかのガイドラインを示す。
- そもそも校内のインターネット環境を完全にする。
- 手書き至上主義のおじさん先生を駆逐する。
- 残った全教員に活用のための研修を受けさせる。
- その上でメンテナンスや通常フローのマニュアルを策定し、属人的にならないようにする。
- イニシャルコストとランニングコストを明確に分けて予算編成。
- 教科書くらいは完全電子化。
- 端末ゴミ化に対する教育委員会への罰則の設定。
- 端末利用の教育と並行してネットリテラシーの教育義務化。
これくらいやらないとたぶん失敗します。
そして国、自治体、教育委員会が連携してこれらの準備がちゃんとできる気がしません。
「1人1台IT端末を」と聞こえのいい政策だけが先走っているのは、決める人たちが現場をろくに見ていないことの証左だと思います。
学校だけに限らず一般社会でも多数存在する「PCに触らないのがアイデンティティおじさん」の対応策すら考えていないのであれば運用など夢のまた夢ですし、コストがどう推移するのかの予測すら怠ってとりあえず言ってみた感が露骨すぎます。
せめて発表の段階で、上記に上げたような準備に対しての道筋を少しでも示せていれば私もここまでボロクソには書いていなかったでしょう。
これを書いている間も特に続報などは出ていないようですので多分示す気もないでしょう。
4000億円使うのであれば、多少なりとも「行けるかも」と思わせるような発表でもしてくれればまだ救いがあるんですが…。
経済刺激のためにある程度のお金を使うのはいいんでしょうが、もう少し活きる可能性の高い使い方をしてほしいものですね。
最後のネットリテラシーに関しては絶対に外してはいけないものです。
現実世界でも無知な人間を食い物にする輩は多数存在しますが、インターネットの世界ではそういう輩がリアルの世界よりも容易にカモにアクセスしてきます。
ましてやネット人口の裾野が広がることになるわけですから、輩もこぞってそこに群がります。
リアルの世界であればある程度親が守ってやれますが、インターネットでは親に隠れて接触してしまうことも容易ですし、そもそも親にネットリテラシーがない家庭も多数あるわけです。
となると端末の利用と並行してネットリテラシーの教育を進めていくための準備も必要でしょう。
別々に教えても生徒側は現実味を感じにくいでしょうし、まして後追いでやっていたのでは間に合いません。
IT端末の運用と並行してのネットリテラシー教育は必須と言えるでしょう。
これも決めた人間にリテラシーがないのでうまくいく未来は見えません。
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1人1台PCとか夢物語だろ、の話まとめ。
最初にも書きましたが、教育の早い段階でIT端末に慣れていくこと自体は悪いことではありません。
むしろこの辺の政策は先延ばしせずにやっていくほうが望ましいとさえ思います。
しかし、今回の政府方針の発表は「現場を見ずに聞こえの良さそうなポイントだけとりあえず言ってみた」感がすごく、酷い未来しか想像できなかったために今回のような愚痴記事を書き上げてしまった次第でございますよ。
もちろん私は政策に関してもITに関しても素人同然のただのおっさんであり有識者でもなんでもありません。
私とは違った見識を持った人の中にはこの政策に明るい未来を見出している人もいるかも知れません。
願わくば将来上記の心配事が杞憂に終わり、未来の自分やこの記事を見た人が「ばっかじゃねえの?」と鼻で笑ってくれることを期待しています。
以上です!