今回はFP3級、金融分野解説の第3回目です。
前回は金利とか預貯金の基本でしたが、今回は「債券」と「利回り」について解説していきます。
だんだんややこしくなっていきますので、めげずにゆっくり慣らしていってくださいね。
Contents
「債券」とはなんぞや。
今回説明する「債券」ですが、簡単に言ってしまうと「借金の証書」のようなものです。
「お金を借りたい!」と思った「国」「自治体」「企業」などが「債券」を発行します。
お金を貸す余裕のある人がその債権を買い、期間中は定められた利子を受け取りつつ、満期には債券に書いてある額面の金額が買い主に返済(償還)されるという仕組みになっています。
債券にはいくつか呼び方があり、
- 国が発行する「国債」
- 自治体が発行する「地方債」
- 企業が発行する「社債」
などがあり、上の3つをひっくるめて「公社債」と呼んだりします。
そして、買ってから満期までの期間中であっても、債券を時価で取引することが可能です。
その場合、発行主体の信用度や利回りなどによってその時価は変わってきます。
債券の金額について。
発行主体が債券を発行する際に決めるのはまず「額面金額」です。
そしてそれを最初に売り出す際、必ずしもその額面金額で発行しなければいけないわけではありません。
例えば額面1万円の債券を、発行主体が9,900円で売り出そうが10,100円で売り出そうが自由ということになります。
このとき、額面金額より安い価格での発行を「アンダーパー発行」、額面より高い金額での発行を「オーバーパー発行」と呼びます。
発行価格自体は額面と異なっていようが好きな金額を決めていいのですが、償還される金額は額面金額です。
そうなると債券を発行時に買って満期の償還まで持っていた場合、買った金額と償還される金額に差額が発生することになります。
アンダーパー発行で買った人がこの差額で得る利益を「償還差益」、逆にオーバーパー発行で買った人がこの差額で被る損失を「償還差損」といいます。
債券の利率について。
債券という呼び名は変わっても結局は借金ですので、多くの場合は利息が発生します。
ですので債券には「利率」が設定されています。
発行時に最初から設定されている利率を「表面利率」と呼びます。
表面利率は額面に対しての利率ですので、発行価格が異なる場合は必ずしも利回りがその通りになるとは限りません。
定期的に利息を受け取れる債券を「利付債」と呼びます。
しかし、債券の中には利率が0%に設定されていて利子を受け取れないものも存在します。
こちらは発行時点で額面金額より低い価格で売り出され、償還差益を利子代わりにしているため、「割引債」とか「ゼロクーポン債」とか呼ばれたりします。
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色々あってややこしい債券の「利回り」。
前回の記事で「利率と利回りは違う」ということをチラッと書きましたが、債券のことを学ぶ際には利回りをしっかり理解しなくてはいけないのが辛いところです。
というのも、債権の利回りには種類がいくつかあるからです。
ただ、債権の利回りにおいては、「買い値に対する債券保有期間の1年あたりの総利益の割合」であることに変わりはありませんので、そこを念頭に置いて読み進めていただければ幸いでございますよ。
ではそれぞれ解説していきます。
- 利率 → 一定期間で貰える利子の元本に対する割合(年利で表されることが多い)。
- 利回り → 利率に元本の増減を加えた最終利益の元本に対する割合。
最初から最後までの「応募者利回り」。
まずは「応募者利回り」についてです。
これは、発行主体が新規に発行する債券を応募の段階で購入し、満期まで持ち続けていた場合の利回りのことです。
計算式としては、
応募者利回り(%)={表面利率+(償還価格-発行価格)/償還期限}/発行価格×100
となっています。
なお前提として、式の中の表面利率は年利、債券の額面価格については100円として計算します。
また、表面利率は小数に直さず「%」を外した数字をそのまま入れてください。
少し形を変えてみましょう。
「償還価格=額面金額」、「発行価格=実際に買った金額」ですので、一番上の分子が表すのは「額面と買い値の差」になりますね。
アンダーパー発行であればプラス、オーバーパー発行であればマイナスになります。
つまりこの一番上の分子で出てくる金額は、償還差益または償還差損を表します。
この償還差益・差損を償還期限で割ることで「1年あたりの償還差益・差損の金額」を求めるわけですね。
今の段階ではこんな感じになります。
応募者利回り(%)=(表面利率+1年あたり・100円あたりの償還差益・差損)/買い値×100
そして表面利率は年利なので、100円あたり年間で貰える利子の金額と一致します。
まあ債券の額面が100円単位なことが多いからでもあるんですが。
なんか騙されてないか?
話を戻します。
先ほど1年あたり・100円あたりの額面金額と買い値の差を出しましたが、これに利率、つまり「1年間に貰える利子の100円あたりの金額」の金額を足すとどうなるでしょうか?
総利益を年あたりに均した金額になるな!
つまり、
応募者利回り(%)=1年あたりの利益または損失÷買い値×100
となります。
ここまで来るとなんとなくイメージがつきやすいのではないでしょうか?
利回りというのは要は利益率と一緒ですので、あとは商売の粗利計算と一緒です。
利益を原価で割れば利益率が出ますので、それに100をかけて%表記に直すということになります。
ぶっちゃけ式だけで覚えようとしても絶対忘れると思いますので、
- 償還差益・償還差損を計算する。
- それを年あたりに均す。
- 利率(=年あたりの利子)を加える。
- 買い値(原価)で割る。
- %表記に直す。
という手順で覚えておくといいかと思います。
この手順に当てはめるやり方は表面利回りだけでなく他の種類の利回りにも応用できますので、ぜひ活用してください。
一応例題やってみましょうか。
問題
年利率2%・5年満期の債券を100円あたり98円で発行した場合の応募者利回りはいくらか。
なお、回答に際しては小数第3位を四捨五入せよ。
まず、1年あたりの償還差益を求めます。
償還差益の総額は「100-98=2円」です。
これは償還期限5年間でのトータル差益ですのでこれを償還期限5年で割ると、「2÷5=0.4」となります。これが年あたりの償還差益です。
次に、年利2%ですので、100円あたり・年あたりの受取利子は2円となります。
なので応募者が1年あたりに得られる利益は「0.4+2=2.4円」となりますね。
利益2.4円に対して発行価格、つまり買い値は98円ですので、「2.4÷98×100=2.44897…」になり、小数第3位を四捨五入ということなので「2.45%」が答えとなります。
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途中から最後まで「最終利回り」。
次は「最終利回り」についてです。
こちらは新規発行ではなく、すでに市場で売買されている「既発債」を買って償還まで持っていた場合の利回りを指します。
なので用語は変わりますがやることはそう変わりません。
一応式を載せときます。
最終利回り(%)={表面利率+(償還価格-購入価格)/残存期間}/購入価格×100
「発行価格」が「購入価格」に、「償還期限」が「残存期間」に置き換わっただけですね。
計算方法は一緒です。
実際の計算問題の際には選ぶ数字さえ間違わないようにすれば大丈夫かと思います。
手順はさっきと同じで、
- 償還差益・償還差損を計算する。
- それを年あたりに均す。
- 利率(=年あたりの利子)を加える。
- 買い値(原価)で割る。
- %表記に直す。
だけです。
途中から途中まで「所有期間利回り」。
次の「所有期間利回り」は償還を待ちきれずに途中で売り払った場合の利回りのことです。
こちらは新規債も既発債も含むことが多いですが、やることに変わりはありません。
「償還価格」が「売却価格」に、「償還期限」が「所有期間」に置き換わるだけですね。
式は、
所有期間利回り(%)={表面利率+(売却価格-購入価格)/所有期間}/購入価格×100
となります。
手順に関しては、
- 売買差益・売買差損を計算する。
- それを年あたりに均す。
- 利率(=年あたりの利子)を加える。
- 買い値(原価)で割る。
- %表記に直す。
となり、償還を待たないので売買差益・差損と呼び方が少し変わるだけです。
ただの目安「直接利回り」。
最後は「直接利回り」です。
こちらは今までの利回りとは少し毛色が違います。
これまでの3つは実際に結果が出た人の利回り詳細であるのに対し、「これから買おうとする人がどれくらい儲かるのか」を予測するための「ただの目安」を表す利回りです。
言い換えると、「債券価格が買い値から変動しなかったと仮定した場合の利回り見込み」ということになります。
なので「価格変動を無視した利回り」ってことです。
確かに利回りの説明ではそう書いたのですが、債券の利率はあくまでも「額面に対する利率」ですので、実際の発行価格や市場価格とは異なる場合が多いわけです。
なので、それと区別するために直接利回りという言い方をしていると思っていただければいいかと思います。
話を戻しますが、こちらの式は非常に簡単です。
直接利回り(%) = (表面利率/購入価格)×100
まあ償還差益・差損や売買損益を無視しているので式が簡単になるのは必然ですよね。
要は「額面で買うよりどれくらい儲かるか・損するか」の目安を計算するだけの利回りがこの直接利回りということになります。
債券価格と利回りの関係。
債券は発行後に市場で取引されることになります。
市場で取引されるということは時価で発行価格とは別の値段がつくということになりますね。
債券の時価は絶えず変動するのですが、その主な要因は「市場金利の変動」です。
変動金利型の債券を除き、基本的に債券の利率(表面利率)は発行時に決められてから動くことはありません。
なので、市場金利と利回りが近くなるように債券の価格変動が起こることになります。
結果から言うと、
- 市場金利の上昇 → 債券価格が下落(利回りが上昇)
- 市場金利の低下 → 債券価格の上昇(利回りが低下)
ということになりますね。
前項の式に当てはめてみるとわかりますが、債券の購入価格が下落すれば利回りが上がります。
逆に債券の購入価格が上がれば利回りが下がります。
債券を売買する人たちは「せめて市場金利くらいの利ざやは取りたい」というマインドが働きます(厳密に同額ではありませんが)ので、利回りが市場金利に満たないほどの高い価格での債券購入は避けようとします。
逆に市場金利よりも大幅に高く利回りが見込めるのであれば買い意欲が高まり、それが債券の価格を市場金利とは逆方向に動かす、ということですね。
売って利回りが下がるなら抱えて償還させたほうがいいですから。
なので、
市場金利と債券価格は逆の動きをする
ということは覚えておいてください。
景気との関係で言うと、景気が上向くと市場金利は上がってきますので、「債券価格は下がる傾向がある」ということも頭に入れておいてください。
もちろん景気が下向きになると債券価格は上がります。
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債券の基本知識まとめ。
- 債券は借金の証書みたいなもの。
- 満期と利率を最初に決めて発行する。
- 発行価格は必ずしも額面と一致しない。
- 利回りは「応募者利回り」「最終利回り」「所有期間利回り」「直接利回り」がある。
- 基本的に計算方法は「差益と利息を年あたりに直した割合」となる。
- ただし、直接利回りは差損益をゼロとして購入価格に対する年間の利子の割合のみを計算する。
- 市場金利が上がれば債券価格は下落し利回りは上がる。
- 市場金利が下がれば債券価格は上昇し利回りは下がる。
- 債券の価格は市場金利や景気と逆に動く傾向がある。
こんな感じでしょうか。
利回りの計算は式だけを見るとわけがわからないとは思いますが、最初は1つずつ分解して順序を追って計算していけば大丈夫です。
いくつか問題をこなすうちにスラスラと解けるようになると思いますので、焦らず数をこなしていってくださいね。
次回は実際の債券商品の解説などをやっていこうと思います。
以上です!