3級FP 金融資産運用

【FP3級入門】ポートフォリオ・デリバティブ取引【金融分野解説その10】

毒猫サムネ 金融10

今回はFP3級、金融分野の第10回です。
今回は「ポートフォリオ」「デリバティブ取引」について解説していきます。

三本松
三本松
厄介な金融分野も今回でやっと最後です。
毒猫
毒猫
しんどかったぜ…。

前回の最後でも書きましたが、「ポートフォリオ」と「デリバティブ」はセットで覚えるようなことでもなんでもなく、全く別のものですのでしっかりと分けて覚えてくださいね。

三本松
三本松
ボリュームの都合上一緒くたにされただけです。

ポートフォリオについて。

「ポートフォリオ」とはなんぞや?

「ポートフォリオ」と横文字でよくわからん単語を使っていますが、これは「持っている資産の組み合わせや内訳」のことを指します。
別に「ポートフォリオ」という単語を使いこなせる必要があるわけではありませんので、問題などでこの単語が出てきてもビビらずに内訳のことだと思っていただければ結構です。

ちょっとだけ意味が変わる「ポートフォリオ運用」≒「アセット・アロケーション」。

上で「ポートフォリオ=内訳」と述べましたが、「ポートフォリオ運用という言葉があり、こちらはちょっとだけ意味が付加されます。
ポートフォリオ運用は、「性格の違う銘柄を色々組み合わせて資産運用を行うこと」と覚えておいてください。

毒猫
毒猫
よくわからんな。

例えば、株の銘柄として一番好きなA社だけに集中して投資するのではなく、他の銘柄や他の業界の銘柄など複数の会社や業界に投資してリスクの分散を図るやり方のことです。

具体的には、外食産業の株だけを買っていたらコロナとかがあったときに暴落してしまう可能性が高いですよね。
なので逆にお家需要が上がる事を考えてテイクアウトに強い会社の銘柄も買っておくとか、マスクや消毒用品を扱うメーカーの株も買っておく、といった感じです。

三本松
三本松
保有銘柄のどれかが下がっても他の銘柄でカバーするイメージですね。

なので「ポートフォリオ」に「運用」とついた場合には「内訳」という意味に「何かあっても負けたくない!」という気持ちをつけ加えて解釈してあげるとよいでしょう。

ちなみに似たような意味の言葉で「アセット・アロケーション」という言葉がありますが、こちらは株の銘柄に限らず他の金融商品もポートフォリオに組み込んでリスク分散を図る運用方法のことを指します。

「株だけじゃ全面安のときに不安だからゴールドとか不動産も買っておこう!」というような運用方法ですね。
例えば債券なんかは株とは比較的逆の動きをすることが多いため、資産の下支えとして債券をポートフォリオに組み込む人は多いです。

三本松
三本松
まあ何買ってもダメってときも往々にしてあるので過信は禁物です。
毒猫
毒猫
身も蓋もないな。

ちなみに金融の分野での「リスク」とは、ただ単に損失のことを指すのではなく「不確実性」という意味で用いられます。
なので「リスクを抑える」ということは「損失を抑える」だけでなく「仮にうまく行ったときの利幅も抑えられてしまう」ということも含みますので頭の片隅にでも入れておいてください。

三本松
三本松
色々買ってたのに仮にA社だけが歴史的発明でボロ儲けして暴騰したら、A社だけに全額投資するより儲けは少なくなりますよね。
不確実性はそんなイメージです。
毒猫
毒猫
リスクを抑えるとやらかしたときの損とラッキーパンチの利益を両方抑えちゃうってことか。

「ポートフォリオの期待収益率」という皮算用。

ポートフォリオに関連する用語に「期待収益率」というものがあります。
これは、「予想される状況及びその確率を求め、各予想の収益率を加重平均したもの」です。

毒猫
毒猫
は?

正直何を言っているかわからないというのは充分に共感できます。
まあ「それっぽく皮算用すること」だと思っていただければ結構です。

実際の問題では「将来の予想をしろ」と問われることはなく、出題者が勝手に作った、

  • 各銘柄の期待収益率
  • ポートフォリオの構成比

といった情報が与えられ、単純にそれを計算するという流れになります。

三本松
三本松
ぶっちゃけあんま実用的ではありません。
毒猫
毒猫
個人で調べようもないもんなあ。

例えば、

  • A社:構成比40%、期待収益率0.5%
  • B社:構成比35%、期待収益率2%
  • C社:構成比10%、期待収益率8%
  • D社:構成比15%、期待収益率10%

のポートフォリオ全体の期待収益率を求めるとします。

「加重平均」と小難しく言っていますが、要はそれぞれの収益率に構成比をかけて、その結果をを足し合わせるだけです。

  • A社:期待収益率0.5% × 構成比0.4(=40%) = 0.2%
  • B社:期待収益率2% × 構成比0.35 = 0.7%
  • C社:期待収益率8% × 構成比0.1 = 0.8%
  • D社:期待収益率10% × 構成比0.15 = 1.5%

→ 0.2+0.7+0.8+1.5 = 3.2
ということで3.2%が答えです。

まさに捕らぬ狸の皮算用といったところでしょうか。
個人がやるにはあまり実用的ではないのは確かですね。
とりあえず期待収益率に関してはこの計算だけできれば問題ないかと思います。

三本松
三本松
あとは用語の意味くらい抑えておけばいいかと思います。

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リスク低減のために使う「相関係数」。

先ほど述べたリスク(不確実性)を抑えることは、相場によって一喜一憂しやすい人間の投資家にとってはある程度必要なのは確かです。
そこで出てくる概念が「相関係数」というものです。

一度は「相関性がある」とか「相関性がない」なんて言葉を耳にしたことがある方は多いかと思います。
要はそれを小難しく数字が絡む感じに言い換えただけに過ぎません。

相関関数は「-1」から「1」の間の数字で表され、2つの銘柄やまたは金融商品における「価格のつられやすさ」を表します

例えば2つの商品の相関係数が「1」の場合はこの2つの金融商品は全く同じ動き方をします。
逆に「-1」であれば完全に逆の動きをします。
そして「0」のときは、動きはバラバラで全く関係のない動きをすることになります。

実際には1や-1はありえないので、

  • 1に近いほど似たような動きをしやすい(Aが上がればBも上がりやすい)。
  • -1に近いほど反対の動きをしやすい(Aが上がればBは下がりやすい)。
  • 0に近ければ無関係な動きをしやすい(Aが上がろうが下がろうがBに関係ない)。

といった感じで覚えておけばいいかと思いますよ。

複数の銘柄や金融商品を持つ場合は、相関係数が小さい商品を持つことでリスクを最小限にすることができます
極端な話、相関係数が「-1」になる商品を持っておけばリスク低減効果がマックスになり、完全にリスクを消せてしまうことになります。
ただし上でも述べたように、リスクは損失の可能性だけでなく儲けの可能性も狭めてしまうので。
株の上げ相場で相関係数が-1に近い商品の比率が大きいと、せっかくの上げ相場に乗ることができなくなってしまうことにもなりますのでご注意ください。

三本松
三本松
長期でで見ると株は上げ続けてますからね。
個人的にはリスク低減しすぎるのもどうかと思います。
毒猫
毒猫
何事もバランスなんだな。

世に悪名高い「デリバティブ取引」。

次に「デリバティブ取引」について解説していきます。
定義としては、「株や債券などの金融商品から派生して生まれた金融商品の取引」となっています。

毒猫
毒猫
は?(2回目)

要は単純に金融商品そのものを売ったり買ったりするわけでなく、金融商品に付随する何かしらを扱った取引というイメージで覚えていただければOKです。

毒猫
毒猫
いやまださっぱりわからんけど?

具体的には、

  • 先物取引
  • オプション取引

などがそれにあたります。

毒猫
毒猫
よくわかんないけどヤバそうなのは伝わる。
三本松
三本松
本来は資金効率を高めるためのものなんだけど、資金効率が上がる関係上どうしても投機(博打)要素が強くなってるから世間の評判はすこぶる悪いよね。

デリバティブ取引の定義とかから考えていってもいまいちピンとこないとは思いますので、とりあえず具体的な取引について説明していきます。
そこからデリバティブ取引がどんなものなのかを理解していただけたらと思いますよ。

将来の売買条件を今決める「先物取引」。

まず「先物取引」についてですが、こちらは「将来の一定時点において、ある商品を一定の価格、一定数量で売買することを約束する取引」のことです。
ちなみに先物取引で扱う商品には「株価指数」「工業製品」「農産物」などがあります。

毒猫
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は?(3回目)
三本松
三本松
金とかガソリンとか大豆とかを売り買いする「商品先物」って言うと聞いたことある人がいるかも。
毒猫
毒猫
仕組みはわからんが大損するイメージはある。

例えば、現在の金価格が1gあたり12,000円だとします。
「今の価格である1g12,000円で3ヶ月後に受け渡しをする」という約束をするのが先物取引です。
そして3ヶ月後の金価格が15,000円に値上がっていた場合、その時点では15,000円のはずの金を12,000円で購入できるので3,000円得したことになりますね。
逆に3ヶ月後の価格が10,000円に下がっていた場合は、10,000円の金を12,000円で買わされるので2,000円損したことになります。
これが先物取引の損益ということになります。

毒猫
毒猫
後の売買を約束するだけ?
それで何でこんなイメージ悪いんだ?

詳細については3級の試験範囲から少し外れますので興味のない方は飛ばしてください。
ただ、仕組みを知っておくと色々捗りますので休憩がてら読んでもらえれば幸いです。

三本松
三本松
昔少しだけ先物屋に勤めていたので、先物取引の説明が不充分だと気持ち悪いという一心で書いていきます。
毒猫
毒猫
その「気持ち悪い」という気持ちが記事を長くしていることを忘れるなよ。
三本松
三本松
サーセン…。

先物取引の仕組み

先物取引において、普通の投資家が実際に受け渡しまで行うことはめったにありません。
ではどうするのかと言うと、「最初に約束した取引と逆の売買を行って相殺する」という決済をすることが基本です。
その時に、最初に約束したときと後に反対売買をしたときの価格が異なる場合はその差額を清算するんですね。
最初の約束だけして決済をしていない状態を「建玉を持つ」という言い方をします。

ちなみにこういった仕組みであることから、自分が受け渡す商品を持っていなくても最初に売る約束をしてしまうことも可能です(これを「売りから入る」と言ったりします)。

三本松
三本松
「建玉」は「決済前に持っている買いまたは売りのポジション」のことをいいますよ。

そしてこの差金決済のために、最初の売買の約束をした際には「証拠金(保証金)」と呼ばれる、いわゆる見せ金を預けることになっています。
この証拠金は売買の約定代金全部を預ける必要はなく、実際の約定代金の数分の1、場合によっては数十分の1の金額を預ければOKであることが一般的です。

三本松
三本松
大体執筆時点で、金先物だと50万円弱の証拠金で1100万円強相当の金取引が可能です。
毒猫
毒猫
20分の1預ければいいわけか。

つまり逆に考えると、「手持ちのお金の数倍から数十倍の取引ができてしまう。」ということになります。
これを「レバレッジ(てこの原理)」と言うのですが、このレバレッジのおかげで見せ金が少なくて済む一方、相場状況によっては証拠金の何倍もの損失を被ることがあります。

三本松
三本松
1100万円から5%下がるだけで預けた50万円が吹っ飛ぶ計算になりますね。
毒猫
毒猫
こわっ!

そして、規定の証拠金が一定以上不足した際にはそれ以上損失が膨らまないように、(証拠金以上の損失が出た場合であっても)強制的に反対売買の約定をして勝手に決済(「ロスカット」と呼びます)されてしまうんですね。

三本松
三本松
ちなみにロスカットを避けるためには定められた期限までに追加の証拠金(追い証)を預けなければいけません。

証拠金以上の損失が出てロスカットされた場合はもちろん、仲介会社に対して不足の証拠金を支払う必要が出てきます。
その時に手持ちの資金がなければ借金コースまっしぐらになってしまうわけです。

この「レバレッジ」と「ロスカット」の2つが「先物は危ない」という大きな原因となっているので、知識としては持っていた方がいいですが、自身のリスク許容度を超える取引は絶対しないようにしましょう。

三本松
三本松
というかよほどのギャンブラー以外は絶対にやらないほうがいいです。
毒猫
毒猫
博打の愚かさを博打打ちが語っても説得力ねえな。
あと()内の別名が多すぎる。
三本松
三本松
そこはほら、金融は専門用語振り回してナンボの世界だから…。

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権利を売買する「オプション取引」。

主なデリバティブ取引にはもう一つ、「オプション取引」というものが存在します。
これは、指数や商品など自体ではなく、「将来の一定時点で、一定の価格でその商品を売買する権利」を売り買いするトリッキーな取引です。

毒猫
毒猫
は?(4回目)

例えば現時点の日経平均が36,000円だとします。
この状態で「1ヶ月後に37,000円で日経平均を買う権利」を1,000円で購入したとしましょう。
この「権利」が「オプション」のことだと思ってください。
この権利を購入した人はその時点で1,000円を支払います。
1ヶ月後、日経平均が40,000円に値上がりした場合、この権利を行使すれば「本来40,000円の日経平均を37,000円で買うことができる」ことになります。
この権利を買った人は購入費用として

オプション代金1,000円 + 買った日経平均の代金37,000円 = 38,000円

この金額を支払って時価40,000円の日経平均を手に入れます。
通常、権利を行使したらすぐに時価で差金決済が行われますので、権利を買った人は差額の2,000円を利益として受け取ることができるわけです。

毒猫
毒猫
下がった場合はどうなるんだ?

逆に相場が下がってしまった場合、権利の購入者はその権利を行使するメリットは一切ないので、権利を行使せずに「買ったオプション代の1,000円が損失」ということになります。
この場合は、権利を売った側がシンプルに1,000円の利益を得ることができます。

なのでオプションを買う人は「損失はオプション自体の価格が上限」ということになります。

三本松
三本松
「オプション代=保険料」みたいなイメージですね。

ちなみにオプション取引も先物取引と同様、売りから入ることが可能です。
この場合売る側が買い手に権利を行使された場合、上の例だと「買い手に37,000円で日経平均を売る義務」を負うことになります。
ポジションを解消しない限りこの義務からは逃れることはできませんので、仮に日経平均が10万円まで上昇した場合は

購入価格100,000円 ‐ 売値37,000円 – オプション代1,000円 = 62,000円

もの損失を被ることになります。
対して売り手側の利益が最大になるのは「買い手側が権利行使しなかった場合」の1,000円が上限になります。
なので「売り手側の利益はオプション価格自体が上限になる」ということになりますね。

三本松
三本松
なので売る人の損失は相場次第で青天井になる危険な取引です。

そしてオプション取引は、買う権利だけでなく売る権利も取引対象となります。
買う権利のことを「コールオプション」、売る権利のことを「プットオプション」と呼びますのでこの用語も覚えておいてください。

さらに、権利行使期日には通常いくつか種類があり、同じ価格条件であっても期日が遠いほどオプション自体の価格が高くなる傾向があります。

三本松
三本松
期間が長いほうがリスク(不確実性)が高まるためです。
毒猫
毒猫
あー、明日とかに日経平均が1万上がることはほぼないけど半年先ならそこそこあり得るからな。

オプション取引は、「買う権利(コールオプション)」と「売る権利(プットオプション)」で分かれ、さらに「買いから入る」と「売りから入る」に分岐します。
1つの取引で4パターンの分岐があってややこしいですがしっかり整理して覚えましょう。

三本松
三本松
投資手法としてはおすすめしませんけどね!

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ポートフォリオとデリバティブ取引のまとめ。

  • ポートフォリオとデリバティブは関連用語ではないので分けて覚えよう。
  • ポートフォリオは内訳のこと。
  • アセット・アロケーションは株以外もポートフォリオに組み込む運用のこと。
  • ポートフォリオ運用とは「大損しにくいように内訳を決める」こと。
  • 期待収益率は単なる皮算用。
  • ポートフォリオの期待収益率は構成比重に応じて加重平均するだけの計算。
  • 相関関数は相関性がどれくらいあるかを1~-1の数字に当てはめただけ。
  • デリバティブ取引は金融商品そのものではなくそこから派生する何かしらを売買する取引のこと。
  • 主に先物取引やオプション取引などがある。
  • 先物取引は将来の売買を約束して差金決済する取引。
  • 先のことなので持ってなくても売り注文が出せる。
  • 証拠金システムのおかげで非常に危ない取引になりうる。
  • オプション取引は将来の売買権利を売買する取引のこと。
  • 買いオプションはコールオプションという。
  • 売りオプションはプットオプションという。
  • こちらも持ってなくても売り注文が出せる。
  • 「買いオプション」の「買い」と「買いから入る」の「買い」は別なので混同しないように整理して覚えよう。

こんな感じでしょうか。

私はクソブラック先物屋で働いていたのでこの辺は問題なく覚えられたのですが、そういった経験のない方にとっては非常にややこしい分野だと思います。
覚える単語が多い上に計算問題もややこしくなりがちですので、焦らずじっくりと覚えて慣れていきましょう。

ブラック企業02
ブラック企業で若い時間を1年以上も無駄にしてしまった話。中身のない会社は様子見なんかしてる場合じゃないよ、の話。若い頃にブラック企業で1年半働いたときの話です。 辞めることは悪でも無責任でもありません。 若い頃の失敗が誰かの役に立てば幸いですよ。...

金融分野の解説は今回で終了です。
次回はどの分野を解説するかはまだ決めていませんが、私の得意順でやってきているので不動産あたりを考えています。

三本松
三本松
クソブラック不動産屋にも勤めてたことありますからね!
毒猫
毒猫
知るか!
ブラック企業02
昔勤めていたブラック不動産屋の話。零細企業がブラックかどうかは社長の性格で決まる。昔勤めていたブラック不動産屋に関しての思い出話です。その会社は数年後に倒産していましたが、今考えるとそりゃそうさとしか思いません。...

以上です!

 

 

ABOUT ME
三本松
野良の1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 副業として「三本FPラボ」経営。 北海道根室市出身、都内在住。 基本は零細メーカーで経理をやりつつ、金融機関に属さない野良FPとして日々勉強中。 無知故に若い時間とお金を無駄にしてしまった経験から、 過去の失敗などで学んだことを記事にして発信しています。