今回はFP3級、金融資産分野の第5回目です。
今回は「株式」について解説していきますのでよろしくお願いいたします。
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そもそも「株」ってなんぞ?
まずは「株」ってそもそも何なのかについて説明しでみます。
株というのは、簡単に言うと「会社のオーナーであることの証書」のようなものです。
基本的に会社を設立するためにはお金が必要です。
「そのお金を出資しているのはアナタです。」という証書的なものを「株」または「株式」というわけですね。
このとき、会社のオーナーは1人でなくても構いません。
複数の人がお金を出し合って設立できるものなので、株の所有割合がそのまま会社に対する持ち分ということになります。
そして株を持っている人のことを「株主」といい、株主として会社が稼いだお金の一部を受け取る権利や、会社に関する重要な決議に対する投票権が所有株数に応じて与えられます。
株主の主な権利
- 利益配当請求権…会社から利益の一部を配当として貰える権利。
- 議決権…株主総会で議案に対する賛否の投票をする権利。
- 残余財産分配請求権…会社が解散したときに余った財産を分与される権利。(ただし債務超過で潰れた場合は赤字分を請求されることはない。)
決算の後には会社の利益の一部を株主に配るのですが、このお金を「配当」といいます。
もちろん会社の業績が悪ければ0円のときもあります。
そして、株主が重要な決議を行う場を「株主総会」といいます。
ちなみに、会社の経営を行うのは株主ではなく「取締役」です。
株主総会では取締役を選任したりもしますので、株の保有割合によっては好き勝手に取締役を選んだりもできるわけですね。
なんとなく株式と会社の関係についてのイメージは掴めたでしょうか。
上場株式の売買について。
国内の証券取引所。
日本には株式を取引する「証券取引所」というものがあり、会社の株式がそこで取引されるようになることを「上場」といいます。
そこで取引される株式は「上場株式」と呼ばれ、そうではない「非上場株式」とはいろいろ区別されて取り扱われることが多いです。
日本で証券取引所がある場所は
- 東京
- 名古屋
- 札幌
- 福岡
です。
ちなみに大阪証券取引所(大証)は東京証券取引所(東証)と合併して「日本取引所グループ」となったため上の一覧では東京に含んでいると思ってください。
現在は現物取引は東京、先物取引やオプション取引は大阪で行われています。
その東証ですが、こちらは会社の規模などの要件によって3つの市場に分かれています。
- プライム市場…グローバル企業向けというコンセプトだが、実際は企業規模のバカでかい会社が上場する。
- スタンダード市場…一定以上の流動性とガバナンス水準をクリアした会社が上場できる。「上場するならちゃんと売買されるんだよな?あと悪さしないような仕組み作っとけよ?」ということ。
- グロース市場…一定以上の規模要件と、先々の成長性が見込める企業が上場できる。
東証一部からプライム市場にスライドした企業には、要件を満たしていない会社が結構あるみたいですね。
今は猶予期間で、要件満たすように各社頑張ってるみたいだよ。
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取引所における株式売買のルール。
株、特に上場株式を取り扱うにあたり、いくつか基本的なルールがありますのでそれについて解説します。
基本売買単位「単元」。
まず、取引所で取引される株式には「単元株」という単位が存在します。
これは、株式を購入できる「原則としての最低単位」のことで、現在はすべて「100株で1単元」と決まっています。
そして、株主総会の投票権である議決権は、1単元につき1票与えられることになっています。
例えば、株価が100円だとすると、普通に買おうとした場合には100円×100株(1単元)=10,000円必要ということになりますね。
単元株を買えない人のための買い方。
基本的にはこの単元単位で株の売買が行われるのですが、資金の少ない人が単元未満の株式を買うことができないわけではありません。
単元の1/10(つまり10株)単位で買う方法が「ミニ株」というものです。
さっきの例でいうと1,000円あれば買うことができるわけですね。
ただしミニ株では議決権がないだけでなく、指値注文ができないなどの制約がありますのでご注意ください。
そして株の買い方にはもう1つ種類があります。
毎月1銘柄につき1万円以上1,000円単位で、一定額分を決まった日に買い付ける方法で「株式累積投資(るいとう)」と呼ばれます。
るいとうもミニ株同様単元未満の投資も可能ですが、株の名義は証券会社となり議決権は証券会社が行使します。
ただし、積み立てていった結果単元を満たした場合には、単元株として振り替えられて購入者に名義が移り、それ以降は議決権の行使が可能になります。
また、配当については単元未満であっても購入者に権利があり、単元未満の期間は自動的に再投資されます。
なお、るいとうで買える銘柄については各証券会社が取り決めたものに限ります。
何でもかんでもるいとうが可能というわけではありませんのでご注意ください。
株式の値決め。
株式市場ではたくさんの人たちが売買を行うため、それに適した売買ルールが定められています。
基本的にはオークション方式ではあるのですが、通常のオークションのように売り手1に対して買い手複数ではなく、売り手も買い手も複数いて行われるため、それに応じた取引ルールが決められています。
まず、取引所の取引では「板」という概念があり、買いたい人が買いたい価格を、売りたい人が売りたい価格を提示します。
これが一覧として表示されているのが「板」と呼ばれるものです。
この状態から新規に注文を入れ、すでに価格提示をしている人と条件が合って初めて売買が成立します。
注文が成立するルールは、「価格優先」「時間優先」の原則となっています。
まず、「価格優先の原則」についてですが、これは
- 買い注文の場合は高い価格のほうが優先される。
- 売り注文の場合は低い価格のほうが優先される。
ということです。
例えば、上に提示した板の状態で、「いくらでもいいから買いたい!」という注文(成行注文)が入った場合には、売り板にある一番安い注文を出した人の売り注文から成約していくことになります。
もちろん成行注文だけでなく、売り手が出している最安の価格より高い価格指定の注文(指値注文)を新規に出しても、売り手の指値注文の安い方から順に成約していきます。
次に「時間優先の原則」についてですが、こちらは当然ではあるのですが、「注文価格が同じであれば先に注文を出したほうが優先」ということになります。
例えば上の売り板の最安値である866円で価格を出している人が2人いて、最初にAさんが200株、次にBさんが300株の指値注文を入れていたとします。
ここから成行注文(もしくは866円以上の指値注文)が300株入った場合、まず成約するのはAさんが出していた注文の200株です。
その後にBさんが出していた注文のうち100株だけが成立することになりますね。
ほんとに特別な人は取引所じゃなくて相対で取引しちゃいます。
ちなみに成行注文は常に指値注文より優先されます。
まあ成行注文は向こうの言い値ってことですから誰よりも高い買い注文、誰よりも低い売り注文と同義ですので最優先されるのは当然といえば当然でしょう。
ちなみに証券取引所では、パニックを避けるため1日の価格変動幅が価格帯によっていくらと決められています。
買い注文が殺到して値幅制限いっぱいまで価格が上がることを「ストップ高」、逆に売り注文が殺到して価格が下がることを「ストップ安」といいます。
このストップ高やストップ安が取引終了時間まで続いた場合は、売買が成立せずに終わってしまうこともありますよ。
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取引の注文と成立。
まずは上でも少し出てきた「指値注文」と「成行注文」について改めて解説します。
「指値注文」は簡単に言うと「いくら以下なら買いたい」「いくら以上なら売りたい」という値段と株数を指定して出す注文のことです。
この注文は発注されてから成約するまでの間。板に価格が表示され、その条件に合う注文が出てきたらその値段で成立します。
また、すでに条件に合う注文が板にあった場合は、条件のいい方から順に成約していきます。
そして、価格を指定せず株数だけ指定して出す注文を「成行注文」といいます。
こちらはすでに板にある注文の中から、条件の良いものから順に成約していきます。
つまり、成行注文はストップ高やストップ安の場合を除き、即座に注文が成立することになります。
株の決済期日。
株の注文が約定した場合、実は即座に受け渡しが行われるわけではなく、若干のラグがあります。
実際に受け渡しが行われる(と言っても帳簿上の話なので実際に取りに行ったりとかはありません)のは、約定日を含む3営業日目となります。
例えば、木曜日に約定した場合の決済日は、土日は営業日に含まないため翌週の月曜日です。
ちなみに祝日や三が日も営業日に含みませんのでそれらが挟まった場合にはその分決済日も後ろにずれ込むことになります。
そして、株主の権利は決済日から発生します。
なので配当や株主優待が欲しい場合には、その株を権利確定日の2営業日前までに約定させておかなければいけません。
この、権利確定日の2営業日前のことを「権利確定日」と呼びます。
それを過ぎたら「権利落ち」と呼ばれます。
ただし、それ以上の上げ材料があれば上がるので過信はしないように。
権利確定日はその会社によってまちまちですので、配当や優待がほしい方はその会社の権利確定日を調べて、その2営業日前に買っておきましょう。
株式の取引形態。
株式の売買には2つの取引形態があり、「現物取引」と「信用取引」に分かれます。
これについて少し解説しますね。
ギャンブルとしてはなかなかおもしろいので興味のある方は調べてみてください。
「現物取引」は、我々が想像する普通の買い物と同じで、買い手が株の代金の総額を支払い、株の受け渡しを以て取引が完了する取引のことです。
イメージ通りの売買そのまんまなので特筆するようなことはありません。
一方の「信用取引」は少しややこしいので頑張って説明します。
こちらは、一定期間後に反対売買を行うことを前提に一部金額を証券会社から借りて株式を売買する取引のことです。
例えば、売買代金100万円の株を買いたい人がいるとします。
現物取引ではもちろん100万円が必要になりますが、信用取引では一部金額(売買代金の30%程度)を担保(保証金)として証券会社に預け、株を買うのに必要な100万円を証券会社から借り入れてその株を買います。
そしてその後、買った株を売却したときに、その利益や損失を清算して保証金を買い主に返却する、という流れになります。
これが信用取引で株を買うということですね。
なお、信用取引では持っていないはずの株を売ることもできます。
売りから入る場合、売り主はまず証券会社から株を借ります。
このとき必要な保証金も売買代金の30%となっており、それを証券会社に預けます。
そしてその株を買い戻したら損益を清算して保証金を返してもらい、借りた株を返却して取引が完了します。
なので、実際に持っている資金の約3倍の株を売買できるのが信用取引、ということになります。
この増幅効果を「レバレッジ」といいます。
そのため世間のイメージはすこぶる悪いですね。
ちなみに買いから入る際に証券会社から資金を借りる形になるため日歩と呼ばれる利息が発生します。
株の売買損益からすれば微々たるものですがただで借りられるわけではないのでご注意ください。
逆に売りから入った場合は貸株料と呼ばれる株のレンタル料が発生します。
ちなみに日歩は配当所得と上場株式等の譲渡所得、貸株料は上場株式等の譲渡所得の計算時に必要経費として差し引くことができますのでこちらは覚えておいてくださいね。
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株取引関係の用語解説。
株の取引をするにあたり、結構な数の専門用語が出てきます。
ある程度知っておかないと「問題の意味がわからない」ということにもなりかねないので覚えておいてくださいね。
出来高と売買代金。
株の取引で意外と重要なのは、「その株がどれくらい取引が多いのか」ということです。
取引が成立した株数のことを「出来高(売買高)」といいます。
また、取引で実際に動いた金額を「売買代金」といいます。
例えば、とある会社の株が500円で3,000株約定した場合、出来高は3,000株(そのまんま)、売買代金は500円×3,000株=150万円となります。
特に出来高は、実際に株を取引する人にとっては意外と重要で、出来高が大きいほど流動性が高くなり価格が安定します。
逆に出来高が恒常的に少ない会社の株は、大きめの注文が入ると急激に価格が変動するため価格が不安定になりがちです。
株式市場にはそういった出来高の少ない株を狙い撃ちして価格を吊り上げる輩もいますので、特に初心者の方は出来高の少ない株には近づかないようにするほうが賢明です。
仕手で吊り上げられた残念な証券会社も昔ありましたが…。
株価をグループ化した「株価指数」。
こちらは取引の用語というよりは取引所の用語という性質に近いのですが、個別の会社の株ではなく一定の基準でひとまとめにしたグループの株価の動きなどを示す数字を「株価指数」といいます。
この株価指数には主に以下のようなものがあります。
- 日経平均株価(日経225)
- 東証株価指数(TOPIX)
- JPX日経インデックス400
- (NYダウ平均株価)
- (S&P500種株価指数)
※()内はアメリカ市場の株価指数
ニュースなどでよく聞く「日経平均株価」は、東証プライム市場に上場している株の中で代表的な225銘柄の株価の平均を表す指数です。
この225銘柄は定期的に入れ替わりますので、入れ替わりによる指数の連続性が途切れないようにうまいこと調整が行われています。
連続性を保つように調整された指数のことを「修正平均株価」と呼びます。
日経平均株価は株価の平均という性質上、「値がさ株」の動向に影響されやすい指数と言えます。
100円の株が1割上がるより10,000円の株が1割上がったほうが平均上がるでしょ?
次の「東証株価指数(TOPIX)」ですが、こちらは、東証プライム市場に上場している銘柄のうち、原則として流通株式の時価総額(株価×発行済株式数)が100億円以上ある銘柄を対象にした指数です。
このように時価総額をベースとした指数のことを「時価総額加重平均株価指数」といいますのでこの用語は一応覚えておいてください
TOPIXは基準日である1968年1月4日の数値を100としたときの現在の数値が使われます。
時価総額の比較という性質上、TOPIXは時価総額の大きな会社の動向に左右されやすいという特徴があります。
次の「JPX日経インデックス400」は、東証のプライム市場、スタンダード指標、グロース市場に上場する企業のうち、
- 自己資本利益率
- 営業利益
- 時価総額
などが一定の要件を満たす会社の銘柄で構成されます。
こちらもTOPIX同様、時価総額加重平均株価指数となっています。
次は日本ではなくアメリカの指数ですが、ニュースなどではちょくちょく出てくるので一応頭に入れておいてください。
「NYダウ平均株価」は、アメリカ企業の中の代表的な30銘柄で構成される平均株価です。
「S&P500種株価指数」は、同じくアメリカの代表的な500銘柄で構成されています。
こちらは平均株価ではなくTOPIXなどと同じ時価総額加重平均株価指数となっています。
「平均」と出てきたら「修正平均株価」、
そうでなかったら大体「時価総額加重平均株価指数」と
覚えてしまってもいいかもしれません。
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株や株取引の基礎知識まとめ。
- 株は「会社に出資したオーナーですよ」という証券のこと。
- 株は主に相対か取引所を通じて売買される。
- 株が取引所で取引されるようになることを上場という。
- 株の上場にはそこそこしんどい要件がある。
- 東京証券取引所には「プライム」「スタンダード」「グロース」があり、それぞれ上場の要件が異なる。
- 株は「単元」という単位で取引されるが、単元未満でも買えるシステムもある。
- 株は「板取引」で売買され、オークション方式で値段が決まる。
- 株の注文には値段を指定する「指値注文」と指定しない「成行注文」がある。
- 成行注文が最優先され、あとは値段優先、時間優先で優先度が決まる。
- 株の決済期日は3営業日目。
- 取引形態には「現物取引」と「信用取引」がある。
- 現物は普通に売り買いするだけ、信用取引は差金決済を前提としてレバレッジがかけられるのでダイナミックなギャンブルになりやすい。
- 信用取引は持っていない株も売りから入ることができる。
- 信用取引はギャンブル性が高いのでおすすめしません!
- 出来高の低い銘柄は大口の注文で価格が大変動しやすい。
- こちらもギャンブル性が高くなりがちなのでおすすめしません!
- 株価指数はいくつかあるが、「修正平均株価」と「時価総額加重平均株価指数」に大別される。
こんな感じでしょうか。
割と株式に関しては小難しくなってしまいがちですが、実際に株の売買をやってみると意外とすんなり入っていける部分はあります。
まあ個別株の取引は投資としてはあまりおすすめできるものではないので、趣味の一環として少額で楽しむ分にはいいかもしれません。
今回は株に関する基本的な情報について解説しました。
次回は株式の中で最も嫌われる、投資判断に使われる指標について解説していきます。
これは初めての用語も出てくるわ計算も出てきて式自体も間違えやすいわで大変ですが、なるべくわかりやすく解説するつもりですのでぜひよろしくお願いいたしますよ。
以上です!