今回はFP3級の金融分野第7回です。
前回は株式投資の判断を行うための指標について解説しました。
紛らわしい計算が多くて面倒だったと思いますが慣れていってください。
今回は「投資信託」について解説していきます。
Contents
そもそも投資信託とはなんぞや?
「投資信託」とは、投資機関が不特定多数の投資家からお金を集め、まとめて運用するシステムのことです。
そしてその収益を各投資家に分配し、投資機関は信託報酬という名の手数料を得ることになります。
投資家が自分で投資するのではなくプロに任せてしまおう、というものですね。
投資信託には、個人投資家など資金力があまりない投資家ではなかなか難しい分散投資を行えるというメリットがあります。
投資対象としては、株式や債券などの有価証券や証券化した不動産などがあります。
投資信託は「契約型」と「会社型」に分かれます。
契約型では主に有価証券、会社型では主に不動産を投資対象にします。
会社型は「投資法人」とも呼ばれ、主に不動産投資法人(J-REIT)として運用を行っています(後述します)。
・契約型と会社型の違い
契約型は主に信託銀行投資家との間に信託契約を結ぶことで成立します。
会社型は、投資法人が投資を行う口座の権利をを投資家が買うという形で成立します。
いまいち違いがわからないと思いますのでこれは覚えなくてもいいです。
微妙に形態が違って証券と不動産で分かれるというイメージでOKです。
投資信託絡みの用語。
投資信託は投資家に代わって機関が運用するという性質上、登場人物が複数出てきます。
なのでまず最初に登場人物を指す用語を説明していきます。
これが曖昧になってしまうと勉強を進めていくうちに理由がわからなくなってしまいますのでしっかり区別して覚えていきましょうね。
- 受益者…投資信託を買う投資家のこと。
- 販売会社…受益者に対して投資信託の販売を行う証券会社や金融機関のこと。
- 委託者…実際に運用方針を設定する機関のこと。投資法人などが該当。
- 受託者…信託銀行のこと。委託者から運用の委託を実際に受ける。
投資家(受益者)は委託者ではないことに注意してください。
投資信託において投資家本人はお金を預けるだけの金主ということになります。
また、投資信託を買う上で係るコストもいくつかありますのでこちらもついでに触れておきます。
- 購入時手数料…購入時に販売会社に支払う手数料。これが無料となっているファンドもあり、「ノーロード投信」と呼ばれる。
- 信託報酬…投信を運用する上で係る運用管理費用。信託財産の中から一定割合で日々差し引かれる。
- 信託財産留保額…中途解約した場合の換金手数料。
投信を買う際には、運用成績だけでなく上記の手数料がなるべく安いものを選んだほうがいいですね。
年5%の利益を出している投信であっても信託報酬が3%とか取られてしまったら実質の利益は2%になってしまいますし、損失を出しても取られてしまうのでここは気をつけたほうがいいです。
そして、買った投資信託を換金する方法も2種類ありますのでこちらも覚えておいてください。
- 解約請求…販売会社を通じて受託会社にある信託財産を取り崩して換金する方法。
- 買取請求…販売会社に直接投資信託の証券を買い取ってもらって換金する方法。
どちらも投資家が換金する方法ではありますが、①は投信の預かり資産を目減りさせるのに対し、②は受益者の権利が販売会社に移るだけで運用財産自体は減らないというのが②つの違いとなります。
どちらの場合も解約したときに受け取る金額の計算方法は、
解約価額 = 基準価額(投資信託の価格) – 信託財産留保額
となります。
もちろん投資信託の基準価額は随時変動しますので、最初に買った金額より上がっていればその分が利益、下がっていればその分は損失となります。
そして投資信託の運用を行うにあたって、委託会社は投資家に対しての義務があります。
それが
- 目論見書
- 運用報告書
の交付です。
「目論見書」とは、簡単に言うとその投資信託の説明書のようなもので、その投信がどのような商品なのかを詳細に記した書類です。
委託会社は運用を始める際には必ず作成しなければいけませんし、販売会社は投資家に販売する際にはその前または同時に目論見書を交付しなければいけません。
たまに正誤問題の引っ掛けで出ます。
②の「運用報告書」は、その投信の運用成績や今後の方針などを記載した書類です。
こちらも作成するのは委託会社です。
投資法人がお金を預かったあとに好き勝手できないようにこういった書類の作成が義務付けられているわけですね。
よく出てくる用語に関してはこんな感じです。
たくさん出てきてややこしいですが少しずつ覚えていきましょう。
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投資信託の分類。
投資信託には契約形態だけでなく様々な分類が存在します。
この項ではそのうちのいくつかについて解説していきます。
「委託者指図型投資信託」と「委託者非指図型投資信託」。
契約型の投資信託には契約形態だけでなく、「委託者指図型」と「委託者非指図型」が存在します。
違いは読んで字のごとく、委託者(運用会社)が信託銀行に対し運用方法を指示できるのが指図型、できないのが非指図型ということになりますね。
では非指図型は受託者である信託銀行が好き勝手に運用するのかと言うとそんな事はありません。
非指図型については運用の方針がそこそこ厳格に規制されており、例えば証券に対しての投資が禁止されていたりします。
「オープンエンド型」と「クローズドエンド型」。
こちらは運用の終わり方に関する分類です。
「オープンエンド型」は、投資家(受益者)が好きなときに解約できるタイプの投資信託です。
解約した場合はその時の評価額に応じたお金が払い戻されます。
「クローズドエンド型」は期間が設定されており、投資家は満期まで解約することができず資金がロックされることになります。
オープンエンド型は解約者が増えると運用資金が急に減ったりして投信自体の安定性が損なわれてしまうため、とくに国内では資金移動の少ないクローズドエンド型が主流となっています。
使いにくくない?
「追加型(オープン型)」と「単位型(ユニット型)」。
次は投資を始められるタイミングによる分類です。
「追加型(オープン型)」とは、投資家がいつでも自由に買えるタイプの投資信託です。
要は「買いたい人が出てきたらいつでも追加で出せます!」ってことですね。
一方の「単位型(ユニット型)」は、運用開始前に募集を募り、運用が始まってしまったら追加で投資することができなくなるタイプの投資信託です。
こちらはいわば「期間限定商品」ということになります。
数年で満期が来る商品が多いようです。
「パッシブ型」と「アクティブ型」。
こちらはどのような目標を立てて運用するかの分類です。
「パッシブ型」は日経平均などのインデックス(ベンチマーク)と連動した運用成果を目指すタイプです。
投資対象などがインデックスと被るため運用方法がシンプルになり、手数料などが安くなる傾向があります。
一方の「アクティブ型」は、ベンチマークを上回るよう積極的に利益を求めて行う運用方法を採ります。
なので日経平均などより大きい利益が出ることもありますが、逆にベンチマークが伸びている好景気でも損失を出してしまうリスクもあります。
運用方法が複雑なため手数料や信託報酬が高くなりがちです。
・ブルファンドとベアファンド
ブルファンド…相場が上昇したときに利益たくさんを出すように設計された投資信託。牛が攻撃するときにカチ上げる様から名付けられた。
ベアファンド…ブルファンドとは逆に、相場が下降したときに利益を出すように売り中心で設計された投資信託。熊が攻撃するときに爪を振り下ろす様から名付けられた。
この項ではさらにアクティブ型の運用方法について少し解説しますのでもう少しお付き合いください。
トップダウンアプローチ。
「トップダウンアプローチ」とは、その名の通り高いところから見下ろすイメージで投資対象を選別することです。
つまり、大きなマクロ経済の視点で景気や金利、為替などを分析して投資対象の業界や銘柄を選択していくやり方です。
ボトムアップアプローチ。
「ボトムアップアプローチ」は、トップダウンとは逆で、下流、つまり個別の会社の調査結果、分析結果を積み上げていって投資対象の銘柄を選択していきます。
トップダウンとボトムアップは対になっている概念ではありますが、必ずしもどちらが優れているということは一概には言えません。
グロース投資。
こちらは個別銘柄の投資判断の基準となります。
「グロース投資」は、その会社の将来性に投資するやり方です。
現在の会社の価値ではなく将来の成長にかける投資手法のため、買う段階で必ずしも割安の銘柄とは限りません。
伸びしろの大きい業界や会社に目をつけて、その会社が大きくならないうちに買っておこうという青田買い戦術とも言えるでしょう。
バリュー投資。
「バリュー投資」はある程度成熟した業界の銘柄の中で、会社の価値に対して株価が割安となっている会社に投資するやり方です。
株式の記事の中で述べた「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」などの指標を元に投資判断をすることが多いです。
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投資信託の運用対象。
こちらも投資信託の分類の話ではあるのですが、投資対象が何かというのは結構大事なところでもあるので分けて解説します。
運用対象の違いでは大きく3種類に分類され、
- 公社債投資信託
- 株式投資信託
- 不動産投資信託
に分かれます。
それぞれ解説していきますね。
縛りが厳しい「公社債投資信託」。
「公社債投資信託」は3つの中で最も制約が多い投資信託です。
というのも他の2つとは違い、株式を運用対象に組み入れることができないのです。
投資対象は、国債・地方債・社債などの債券です。
なので株式等に比べてボラティリティが低く、比較的安定した運用が可能です。
そこはご注意ください。
公社債投資信託の中で少し特殊なものがありますのでそちらも少し触れておきます。
「MRF(マネー・リザーブ・ファンド)」と呼ばれる投資信託は1円単位で購入でき、解約にかかる手数料やペナルティが一切なく、日々収益が精算されて月末に自動的に再投資される仕組みになっています。
で、なぜわざわざMRFだけ説明するかと言うと、これは証券会社が預金の代わりに設定している投信だからなんですね。
証券会社は銀行ではないので利息をつけてお金を預かることができません。
そこで証券会社内での預かり資産を増やすためにこのファンドが設計されているわけです。
株式も組み入れられる「株式投資信託」。
「株式投資信託」は、株式を投資対象にできる投資信託です。
こちらは株式だけで運用するという意味ではありません。
実際には公社債だけで運用しているものであっても、将来的に株式を組み入れることが可能であれば株式投資信託となります。
極端な話、「株式投信と思って買ったら中身公社債だけだった!」みたいなことも起こり得るわけですね。
必ずしも株式だけ、もしくは株式を組み込んでいるとは限りませんのでご注意ください。
不動産を中心とした「不動産投資信託」。
「不動産投資信託」は株や債券ではなく、主に不動産を運用対象にしている投資信託です。
こちらは一定の範囲で有価証券の組入れが認められていますが、割合などが決められていることが多いため、「不動産投資信託のはずなのに買ってみたら中身がほとんど株だった!」というようなことはないようです。
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上場投資信託について。
投資信託の中には証券取引所に上場されているものもあります。
こちらは上場株式と同じように取引中はいつでも時価で売買することが可能です。
その中で代表的なものをいくつか解説しますね。
「ETF(上場投資信託)」。
「ETF」は日経平均や海外の株価指数、債券、ゴールド、原油、農産物などの指数に連動するように設計された投資信託です。
通常の株取引と同様、成行注文や指値注文が可能で、原則として信用取引も可能になっています。
「J-REIT(不動産投資法人)」。
「J-REIT」は主に不動産およびその賃借権などに投資し、その賃貸収入などの運用益を分配する投資信託です。
こちらも株取引同様に、成行注文、指値注文、信用取引も可能で、換金時の信託財産保留学がないのが特徴です。
ただ、期間限定のクローズドエンド型であることにご注意ください。
だから何だって話だけど。
「トータルリターン通知制度」。
いきなり謎の制度の話が出てきましたが、「トータルリターン制度」とは、販売会社が投資家に対して年に1回以上、保有投信に関するトータルリターンを通知する義務を負う制度のことです。
トータルリターンとは、一定期間におけるトータルの儲けまたは損失のことです。
計算式で言うと、
トータルリターン = 保有投信の現在評価額 + 累計分配金額 + 累計売却金額 – 累計買付金額
といった感じです。
例えば、ある投資信託を1万円で100口買い付けたとします。
その後総額3万円の配当を受け、それを12,000円で50口売却したとしましょう。
そしてその投信の現在価格が9,800円になったとします。
この場合、
- 買付金額 → 100万円
- 売却金額 → 60万円
- 分配金 → 3万円
- 現在評価額 → 49万円
となるので計算は、
49万円 + 3万円 + 60万円 – 100万円 = 12万円
となり、この期間で得た投資家のトータルリターンは +12万円 ということになりますね。
買った投信が値下がりしまくって評価額や売却金額が低くなる場合は 当然マイナスになることもあるのでご注意くださいね。
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投資信託のまとめ。
- 投資信託は、投資を行う専門家が投資家からお金を集めてまとめて投資して分配する仕組みのこと。
- 今更ですが「投資信託」、「投信」、「ファンド」は同じ意味。
- 投資信託はその運用方法等によっていろんな分類がある。
- 「株式投資信託」は実際に株式を組入れなくてもOK。
- 上場投資信託は「ETF」と「J-REIT」を覚えておこう。
- ETFとJ-REITは普通の個別株みたいな取引ができる。
こんな感じです。
これも株式投資と同じように、自分で買ってみると手っ取り早く覚えられるものではあるのですが、経験のない人にとってはなかなかとっつきにくい分野ですよね。
ただ投信は個別株に比べて元本毀損が比較的少ない(ものが多い)ので、思い切ってお小遣いで買ってみるというのも一つの手かもしれません。
実際に買うときには、なるべく手数料や信託報酬の安いものを買うようにしましょう。
欲張ってアクティブファンドを買っても手数料負けする可能性が高まりますので個人的なおすすめはインデックスファンド(パッシブファンド)です。
その中でも、幅広い銘柄に投資する世界株あたりがいいと思います。
あと資金に余裕があるのであれば、株式と逆の動きをする債券ファンドや、不動産やゴールドのファンドなど、株式市場以外のファンドに資産をちらしておくとある程度リスクヘッジになります。
ちなみに私が持っている投資信託は、
- 楽天VTI再投資型(全米国株)
- e-MAXIS Slim S&P500 (米国株)
- e-MAXIS Slim オールカントリー(世界株)
の米国株と世界株の投信で6割くらい、残りの4割を
- VWO(新興国株)
- VEA(米国以外の先進国株)
- AGG(米国債券)
- IYR(米国不動産)
- GLD(ゴールド)
に散らして積み立てています。
いずれもインデックスファンドで信託報酬なども安いものを選んでいますので興味のある方は検索してみてください。
ロボアドバイザーは信託報酬が高い(1%)のでそこの構成銘柄を証券会社から直接買ってコストを下げている感じですね。
なお、投資を行う場合は完全に「自己責任」です。
上で挙げた銘柄が必ず儲かるというわけではありませんし、手数料や信託報酬は安いほうがいいという一般論を説明するにあたって例示しているだけですのでそこはご理解ください。
また、投資は必ず「余裕資金」で行ってください。
現況の生活費は勿論、近い将来に必要になるお金も投資に回すことは非常に危険です。
当たり前ですが、投資は元本が保証されるものではありません。
余裕資金について説明した記事はこちらです。
よろしければご参考までに。
以上です!