3級FP 金融資産運用

【FP3級入門】外貨建て金融商品の基礎知識。【金融分野解説その8】

毒猫サムネ金融8.jpg

今回はFP3級金融分野の第8回です。
今回は外貨建て商品の基礎知識について解説していきますよ。

外貨建て金融商品とは?

外貨建て金融商品とは、「日本円を除く通貨(外貨)で取引される金融商品」の総称です。
主に米ドルやユーロなどで構成されるものが多いですが、商品によってはその他の通貨で取引される商品ももちろん存在します。
商品の種類としては、

  • 外貨預金
  • 外国債券
  • 外国投資信託

などがあります。

三本松
三本松
FXなんかも含まれますがFP試験では扱いません。
毒猫
毒猫
まあ世間的なイメージは博打だからな。
三本松
三本松
為替手数料が激安だからちゃんと使えば外貨預金なんかよりは多少良心的な商品なんだけどね…。
ドル円相場01
外貨預金よりもFXのほうが有利な理由。リスクを自身で管理すればFXは怖くないが、特におすすめではないよ、の話外貨での資産運用を考えている場合、外貨預金という選択肢にメリットはありません。 悪名高きFXのほうが仕組みとしてかなり有利なのをご存知ですか?...

外貨建て金融商品には共通のリスクがあるのでこちらを覚えておくといいでしょう。
そのリスクは主に、

  • 為替リスク
  • カントリーリスク

の2つです。

外国為替は絶えず変動していますので、仮にその商品が外貨建てで利益を出していたとしてもその外貨自体の価値が毀損してしまえば損失を被ることもありえます。
これが「為替リスク」と呼ばれます。
なので利益や利回りを計算する際には、商品自体の利益だけでなくその通貨自体の時価を計算して円での損益を出さなければいけません

三本松
三本松
計算問題の手間が1個2個増えることになりますね。

そして「カントリーリスク」は計算では考慮しませんが、実際に外貨建て金融商品で運用する際には頭に入れておかなくてはいけません。
債券の記事でも少し触れましたが、こちらは「その国自体のリスク」に該当します。
当該外貨を発行する国の政治状態や経済状況などが悪化すれば当然為替にも影響しますし、最悪の場合日本円に換金できなかったりすることになります。

三本松
三本松
なので聞いたことのない通貨や戦争中の国の通貨など、危ない外貨での運用は手を出さないようにしましょう。

スポンサーリンク




外国為替の基礎知識。

外貨建て金融商品を学ぶにあたって前提として持っておかなければいけない知識について最初に解説していきますね。
ニュースなどでも見聞きする項目なので既にわかっている方は飛ばしてもらって構いません。

為替の「円高」「円安」について。

為替について馴染みのない人がよく勘違いするというアレですね。

1ドル100円から150円になったら円高だっけ?円安だっけ?

と混乱する人もたまにいるかと思います。

わかっている方はいいですが、いまいちピンとこないという方は「円高ドル安」「円安ドル高」という感じで必ずセットで覚えてください
というのも、為替は必ず2種類(もしくはそれ以上)の通貨のペアで動向を判断します。
なので円高円安だけで覚えていても迷子になるのは当然といえば当然なんですね。
そのうえで、

  • ドルの価格が高くなったら「円安ドル高
  • ドルの価格が安くなったら「円高ドル安

という覚え方をしてください。
他の通貨の場合はドルの部分を置き換えるだけです。

基本的には「円安ドル安」という言い方はしません。
必ず「高」と「安」がセットで出てきます。

三本松
三本松
円もドルも安いときは高くなっている他の通貨が必ず出てきます。
毒猫
毒猫
どういうこと?
三本松
三本松
為替は相対評価だからすべてが安いというのはありえないんですよ。
てか円安ドル安は忘れていいです。
毒猫
毒猫
ややこしくなるなら最初から言わなきゃいいだろ!

例えば1ドルが100円から150円に動いた場合については、1ドルの額面価格が100円から150円に値上げされたのと同じですので「ドル高」となります。
そして「ドル高は円安とセット」なのでこの場合は「円安ドル高」が正解です。
「円安」と聞いたら反射的に「ドル高」が思い浮かぶようにしておけば間違えることはないかと思います。

三本松
三本松
あとは「1ドル」をお金としてでなく「商品」として考えると間違いにくくなりますね。
毒猫
毒猫
あー、ラーメンが5,000円に値上げしたら「ラーメン高っ!」ってなるのと一緒か。
三本松
三本松
何か腹立つけどまあそんなイメージでOKだよ。

「TTS」「TTB」「TTM」とは。

日本円から外貨に両替する場合や外貨から日本円に両替する場合はともに必ず金融機関から手数料が取られてしまいます
その基準の価格となるのが「TTS(対顧客電信売相場)」「TTB(対顧客電信買相場)」「TTM(仲値)」の3つです。
米ドル外貨預金の場合だと基本的に手数料は仲値であるTTMを基準にプラマイ1円として考えておけばいいでしょう。

三本松
三本松
実際は通貨や金融機関ごとに手数料の金額は異なります。
問題では手数料は与えられますのでご安心ください。

つまりこのケースだと、金融機関がドルを渡すときに1ドルあたり1円、逆にドルを受け取るときにも1円で合計2円の手数料を徴収するということになります。

例えば相場が1ドル=150円のときであれば、顧客が1ドルを買う場合は151円を金融機関に支払います。
逆に手持ちの1ドルを円に換えたい場合は149円で売るという感じです。

そしてこの3つの値段を表す3つの単語は覚える必要があります。
TTMについてはMが真ん中というのでわかりやすいですが、このTTSとTTBが円高円安以上にどっちか覚えにくいのが厄介なところです。

私も割と最近までうろ覚えだったので、銀行勤務のとある知り合いに覚え方を尋ねたことがあります。

三本松
三本松
TTSとTTBってごっちゃになるんだけどどっちがどっちなの?
妻
「S」は「Sell」だから売り、「B」は「Buy」だから買いだよ!
三本松
三本松
いやそれはわかるけどこっちと銀行のどっちの売り買いなのかで逆になるじゃん?
そこがわからんのよ。
妻
銀行が顧客の立場でもの考えるわけないでしょ!?
銀行から見た外貨の売り買いに決まってんじゃん!

とのことでした。
私はこの芯を喰った回答で間違えることはなくなりましたがいかがでしょうか?

うろ覚えだったとしても、円高円安のときと同じく「外貨をお金ではなく商品として考える」という前提で、「銀行が客の立場を慮ることはない」と考えることで正解にたどり着けるではないかと思います。

毒猫
毒猫
銀行勤めが銀行に対して辛辣すぎて草生える。

スポンサーリンク




主な外貨建て金融商品。

円高円安、TTS/TTBなどの基本的な用語がわかったところでいよいよ外貨建て金融商品について解説していきます。
実際に運用する上ではあまり実用的な商品とは言えませんが、外貨建てで運用することを検討するのであればベースとして持っていたほうがいい知識ではあるので我慢して頑張っていきましょう。

外貨建て金融商品は、

  • 日本円に比べて利回りが高い(日本が超低金利のため)。
  • 運用利回りの他に為替差益が期待できる。

という2点がメリットとして謳われていますが、為替差益は為替差損と表裏一体であることは忘れないでください。
満期や売った際に、購入時より円安になっていれば為替差益、円高になっていれば為替差損が出ます。

外貨預金。

まずは外貨運用の基本中の基本である「外貨預金」です。

こちらは外貨そのものを買って預金するタイプの金融商品です。
ただの預金ではあるのですが、円預金では日本の基準金利に準じた利率となるのに対し、米ドルならアメリカの基準金利というようにその通貨の発行主体国の基準金利を元にした利率が適用されます
ここ10年以上の間、日本円の預金金利は地を這うが如く低いものでしたので、日本円よりも金利が高い外貨での預金がそれなりに魅力のある金融商品として成り立っているわけですね。

三本松
三本松
実際は金融機関が色々抜いているのでそうでもないんですけどね。
毒猫
毒猫
何かトゲあるな…。

その外貨預金についてはいくつか覚えておく点があるので挙げておきます。

  • 利子は利子所得となり20.315%の源泉分離課税
  • 為替差益は雑所得となり総合課税
  • 外貨定期預金だと途中解約によるペナルティが発生することがある。
  • 預金保険制度の対象外(円預金は1000万円までは保護される)。

こんな感じです。
利息による利益と為替差益で税の取り扱いが異なる点に注意しましょう。

外貨建てMMF。

あまり実際に買って運用することはないとは思いますが、もう1つ個別で覚えておいたほうがいい商品があります。
それが「外貨建てMMF」という商品です。

こちらは投資信託の記事で解説した「MRF」に近い商品で、流動性を確保しながら預金代わりに外貨を預けておく投資信託です。
MRFと同様、売買手数料や信託財産留保額などは発生せず、いつでもペナルティなしで解約が可能です。
ただし外貨建てである以上為替リスクは当然に存在し、元本保証もありません
あと、証券会社に買い付け用の外貨を預けておく目的で運用する商品のため、こちらの購入には外国証券取引口座の開設が必要になります。

ちなみに昔は日本円建てのMMFも存在しましたが、日銀のマイナス金利政策により利息がつかなくなったため現在は買うことはできません。

こちらは株式を組入れない投資信託で、主に格付けの高い外国の短期公社債をメインとして運用されています
比較的安全性は高い商品ではありますが、為替の動向によっては大きな為替差損を被ってしまう可能性があることは忘れないでください。

以下、特徴のまとめです。

  • 分配金は運用実績に応じて受け取る(※毎日決算で配当があれば月末にまとめて分配)。
  • 元本保証なし
  • 分配金は申告不要制度もしくは申告分離課税からの選択
  • 為替差益は申告分離課税(株式等の譲渡所得と同じ扱い)。
  • 解約にはペナルティ無し(外国株等を買うときの繋ぎの商品みたいなものなので)。
  • 預金保険制度は対象外(そもそも預金ではない)。
  • ただし、国内の証券会社で購入した場合は投資者保護基金の対象

こんな感じです。

MMFに関しては狙って買うような金融商品ではありませんが、外国株などを買う場合の買い付け資金の繋ぎのようなポジションですので、銀行が扱う外貨預金との対比で色々覚えておくといいかと思いますよ。

スポンサーリンク




外貨建て金融商品でよく出る問題。

で、FP試験の金融分野では級にかかわらず頻繁に出題される問題があります。
それが「外貨預金の利回りの計算」です。

三本松
三本松
確か1級の実技試験でも出たような気がします。
CFPだったかな?
毒猫
毒猫
うろ覚えじゃねえか。

要は、「外貨預金をして満期になって日本円でいくら儲かったか」とかそれに類する問題がちらほら出てきますので、基本となる円換算利回りについては悩まずにできるようになったほうがいいですよ、ということです。

早速例題を見てみましょう。

例題

下の外貨預金を満期時に円に換えた場合の円換算利回り(%)はいくら?
※税金については考慮しない。
※回答が割り切れない場合は小数点以下第2位を四捨五入する。

  • 1年満期・年利率5%(満期一括払い)の米ドル預金
  • 預入額 10,000ドル
  • 預入時の為替相場(TTM) 150円
  • 満期時の為替相場(TTM) 160円
  • 為替手数料 1ドルあたり片道1円

円預金であれば受け取った利息を投資金額で割って求めるだけなんですが、外貨建ての商品に関してはこれに為替差益(為替差損)を加味して利回りを求めなくてはいけないのが面倒なところです。

計算の手順としては、

  1. 外貨預金を始めるときに必要な日本円の原資を求める
  2. 外貨のままでいいので利息を求める
  3. 外貨の原本と利息を足す
  4. 外貨の元利合計を円に換える
  5. 元利合計から原資を引いて利益総額を求める
  6. 利益総額を原資で割って利回りを求める

となります。
ちなみにこの問題では満期が1年なので6番で計算は終わりですが、満期が1年以外で年利回りを求められた場合はさらに期間で割って年利回りの形に直してやる必要があります。

ではこの順番に沿って例題を解いていきましょう。

まず外貨預金を始めるにあたって必要な日本円の原資については、必要なドルの金額にドルに換えるためのレートをかけて求めます
そして、かけるレートについては与えられているTTMが150円で為替手数料が片道1円のため「150+1=151円」を利用します。

「手数料◯円」ではなく「TTS◯◯円・TTB●●円」という与えられ方をする場合がありますが、外貨に換える場合は「TTS」の価格を使用します。

三本松
三本松
TTS・TTBがわからない場合は、「とにかく顧客に不利な価格」を使えばOKです。
毒猫
毒猫
ドルにするときは高い方、円にするときは安い方ってことか。
三本松
三本松
銀行が儲かる=客が損するだからね。

そして必要な原資の計算は

151円 × 10,000ドル = 151万円

となります。

次に外貨の利息を求めます。
これは単純に預けたドルの利率をかけるだけなので、

10,000ドル × 5% = 500ドル

となります。
これが顧客の利子としての利益です。

手元には元本10,000ドルと利子500ドルの合計10,500ドルがありますので、次はこれを円に換えていきます。
満期時の仲値は160円で手数料が1円ですので、円に換えるときのレートは「160円-1円=159円ということになります。
円に換えたときの元利総額は、

10,500ドル × 159円 = 1,669,500円

となり、ここから原資である151万円を引いてトータルの利益を求めます

1,669,500円 – 1,510,000円 = 159,500円

これが利益です。
最後に利益を原資で割って利回りを求めます
利回りは%で表示するので最後に100をかけるのを忘れないようにしましょう。

159,500円 ÷ 1,510,000円 × 100 = 10.5629…(%)

小数点以下第2位を四捨五入ですので

10.5629…%  ≒ 10.6%

が答になります。

この例題では満期時に円安ドル高になっているため結構な利回りになっていますが、逆に円高ドル安になってしまった場合は為替差損により利回りが低下することになります
最悪利回りがマイナスという自体も起こり得ますのでご注意ください。

三本松
三本松
利回りがマイナスになるような問題を試験で出すかは微妙なところですが…。

ちなみに覚えなくてもいいんですが、どうしても何らかの公式を覚えて当てはめたいという方向けに計算式を書いておきます。
こっちのほうが楽という方はご利用ください。
ただ、上の理屈を覚えておかないと応用が効かなくなるのでそこはご理解くださいね。

利回り = [{満期時TTB×(1+利率) – 購入時TTS} / 購入時TTS] × 100(%)
※分子にある利率は少数表記(例:5%→0.05)

利回りだけを求めるのであればドル預金額は1ドルでも1万ドルでも関係ありませんので上の式で求めることは可能です。

三本松
三本松
分数表記が難しいので見づらくてスミマセン。

要は預金額を無視して1ドルで利回りを計算した場合の式ということですね。
まあ流れを理解していれば必要のない式ではあるのですが、こういうやり方を好む方もいるかも知れませんので参考までに。

スポンサーリンク




外貨建て金融商品のまとめ。

  • 「外貨建て金融商品」とは「日本円以外の通貨で構成された金融商品」のこと。
  • 外貨預金、外国債券、外構投資信託などが該当する。
  • 外貨建て金融商品には為替リスクとカントリーリスクが内在する。
  • 商品自体の運用成績以外に、為替の変動で利益や損失が出る。
  • 円高は「円高ドル安」、円安は「円安ドル高」と通貨ペアのセットで覚えて混乱を避ける用にしよう。
  • 為替相場を表す「TTS」「TTB」「TTM」を理解する。
  • TTSは「銀行が外貨を売るときの円価格(高い方)」。
  • TTBは「銀行が外貨を買うときの円価格(安い方)」。
  • とにかく「顧客が不利になる」ほうが正解。
  • 3級で出てくる主な外貨建て金融商品は「外貨預金」と「外貨建てMMF」の2つ。
  • 上の2つは特徴の対比で覚えておこう。
  • 外貨建てMMFは証券会社で外国株などを買うときの繋ぎ商品みたいなものなので性格が預金に近い。
  • 外貨預金の利回りの計算は問題をこなして覚えよう。
  • 円から外貨への両替、外貨から円への両替で手数料を取られることに注意。
  • 利息と為替差損益を合計した損益から利回りを求めるので損益を合計して計算する。

こんな感じです。

外貨建ての金融商品というとどうしてもメインは外貨預金となってきますので、外貨預金について覚え、かつ利回りの計算ができるようになることが求められます。
あとはやはり円高・円安、TTB・TTSなどのどっちがどっちかわかりにくい単語を性格に把握しておくことが理解のカギとなりそうですね。

あとついでに私個人の主張ですが、

外貨預金は人に勧められるような金融商品ではありません!

という叫びを持って結びにしたいと思います。

ドル円相場01
外貨預金よりもFXのほうが有利な理由。リスクを自身で管理すればFXは怖くないが、特におすすめではないよ、の話外貨での資産運用を考えている場合、外貨預金という選択肢にメリットはありません。 悪名高きFXのほうが仕組みとしてかなり有利なのをご存知ですか?...
毒猫
毒猫
なにそれFP試験と関係あるのか?
三本松
三本松
ない!!

 

以上です!

 

・知識の定着には問題集が一番ですよ!

 

ABOUT ME
三本松
野良の1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 副業として「三本FPラボ」経営。 北海道根室市出身、都内在住。 基本は零細メーカーで経理をやりつつ、金融機関に属さない野良FPとして日々勉強中。 無知故に若い時間とお金を無駄にしてしまった経験から、 過去の失敗などで学んだことを記事にして発信しています。