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不動産営業マンは固執するが顧客に何のメリットもない「両手仲介」って何?

両手業者.jpg

皆さんは不動産取引に関する話の中で、「両手仲介」という言葉を聞いたことはありますか?
不動産業に従事する方は必ず知っている、というか大抵の営業マンはこれを目指して営業を行っているのですが、顧客となる個人の人はあまり聞き慣れない言葉なのではないでしょうか?

私は以前クソブラック不動産業者で働いていたり、FPの資格を勉強する中で不動産関係のニュース記事などをよく読んでいたので割と当たり前に知っていたのですが、意外と一般に知られていないという記事をつい最近目にしました。

https://www.reds.co.jp/p16023/

というわけで今回の記事では、意外と知られていない「両手仲介」について書いていきますよ。

不動産取引における基本的な仕組み。

何の商売でもそうなんですが、不動産取引においても当然売り主と買い主が存在します。

三本松
三本松
不動産の場合は賃貸もメジャーな市場として存在しますが
仕組みは大体一緒なのでここでは売買のケースで進めていきますね。

ただ、不動産を取引するに当たっては法的な制約などがあり手続きなども煩雑になるため、個人などが不動産取引を行う場合には不動産業者を間に入れて行うことが一般的です。

流れとしては、まず不動産を売りたい売り主は不動産業者に声をかけて物件を売りに出します。

売り主仲介.jpg

売り主が声をかけた不動産業者は「元付(もとづけ)」と呼ばれ、売買が成約した際には売り主から一定の手数料をもらうことができます。

一方の買い主側もまず不動産業者に声をかけて物件を探すことになります。

買い主仲介.jpg

買い主が声をかけた不動産業者は「客付(きゃくづけ)」と呼ばれ、こちらも成約の際に買い主から手数料をもらうことになります。

つまり、1つの物件が動くに当たり、「売り主」「買い主」「元付け業者」「客付け業者」の4者が関わることになり、仲介手数料は売る側と買う側で2箇所発生することになります。
これが不動産取引の基本的な形です。

片手仲介02.jpg

売主と買主の間に不動産業者が2社入るこの基本的な形はこのあと述べる両手仲介に対し、「片手仲介」と呼ばれます。

不動産業者の手数料が2倍になる両手仲介。

上で述べた基本的な不動産取引の形態では不動産業者は2社絡んできます。
しかし中には、売り主についた元付業者が自ら買い手を見つけて客付業者を兼ねるケースがあります。
その業者は元付としての手数料と客付としての手数料の両方を受け取ることができます。
これが「両手仲介」と呼ばれる形です。

両手仲介003.jpg
毒猫
毒猫
誰だコイツ…。
三本松
三本松
AIに「色黒ツーブロックグラサン不動産営業マン」って入れたらこれになった。
毒猫
毒猫
キモッ!!

1件の成約で2件分の仲介手数料が得られる両手仲介は単純に実入りが倍になりますので、厳しいノルマを課せられる不動産営業マンにとっては非常に美味しい取引になることがわかりますね。
ですので営業マンはなるべくなら効率よく手数料を得られる両手仲介を目指して活動することが多くなります。

これだけなら不動産屋の実入りが2倍になるだけで、特に顧客にとってデメリットがあるようには思えません。
しかしそれだけでは終わらず顧客のデメリットが先々出てくるのが両手仲介の厄介なところです。
実際に外国では両手仲介自体を法律で禁止している国も存在します。
次は何が問題になってくるのかについて次項で見ていきましょう。

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両手仲介が引き起こす顧客のデメリット。

両手仲介自体が顧客のデメリットとなるものではありませんが、両手仲介が引き起こす要因となるデメリットがありますのでそれについて見ていきましょう。

1.営業担当が依頼者の利益を優先できない。

不動産の営業においては、買い主と売り主にはそれぞれの担当がついています。
それぞれが顧客から依頼されて仲介をしている以上、客付は買い主の、元付けは売り主の利益を最優先に動くのが筋です。
しかし両手仲介では本来利益相反となる客付と元付を兼務していますので、双方の利益を最大化させることはできません。
では両手仲介を行う業者(担当営業マン)が何を目指して仕事を進めているかというと、「とにかく両手仲介を一刻も早く成立させること」になってしまうわけです。

当然顧客の利益は二の次で、顧客双方の要求に対しても

どう答えれば早めの成約に近づくか

ということを優先して回答します。
例えば買い手から、

三本松
三本松
値下げ交渉はどれくらいできる?

と質問があったとします。
このとき買い手が値下げがなくても買いそうだと判断した場合は売り主側の心象を悪化させないように売り主には伝えず、

両手業者
両手業者
この売り主様は値下げは難しい方なんですよ。
まあ今はローン金利も低いですしお客様の年収ならこの金額でも無理なく返せます云々。

と雑な説得をしてきたりします。
買い主の利益を考えて行動するのであれば、通るか通らないかはともかく一度売り主に諮るのが当然ですよね。

逆に買い主が本当に価格に見合わないと考えて発言していると判断した場合や、めぼしい買い手自体を自分が見つけてこれなかった場合には矛先は売り主に向かいます。

利益相反001.jpg

つまり本来の片手仲介であれば、自分がついている顧客に逃げられないようにその顧客の利益を優先すれば営業マン自身の利益に直結するのに対し、両手仲介では両方の顧客利益が両立しないため、営業マンが「説得しやすい方の利益を犠牲にして立ち回る」ことが多くなります。
状況によってコロコロ立ち位置が変わる営業担当なんて信用できませんよね。

毒猫
毒猫
情報の足りないやつ、押しの弱いやつが割りを食いやすくなるんだなあ。

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2.両手仲介は囲い込みの温床。

そして2つめ、両手仲介の一番大きなデメリットは、「囲い込みを行う業者が出てくることに繋がる」ということです。

毒猫
毒猫
いやまず囲い込みって何よ?

「囲い込み」は不動産業界にはびこる悪習の1つです。
簡単に言うと、「元付業者が他社からの買い手を締め出す行為」のことです。

先程書いた基本的な取引形態では、

  1. 売主が元付業者に売却依頼。
  2. 買い主が客付業者に買付依頼。
  3. 買い主が物件を検討。
  4. 買い主が客付業者に内見依頼。
  5. 客付業者が元付業者に内見依頼。
  6. 買い主が購入検討、決断。
  7. 売買契約。

という流れになります。
囲い込みとは、この流れの5番の段階で元付業者が買い主の内見を断ってしまうことを言います。

囲い込み002.jpg

つまり、買い手を募集している段階にあるにも関わらず、自分で買い手を見つけて両手仲介を成立させたい元付業者が、他社からの買い手を締め出してしまうんですね。

囲い込みは本来違法行為なのですが、内見拒否に適当な理由をつけてしまえば買い主や客付側に裏を取ることは不可能なので、現在でも割と頻繁に行われています
特に買い手を集める力のある大手企業ほど囲い込みをよく行っていると言われています。

https://diamond-fudosan.jp/articles/-/148998

↑囲い込みについて検証した記事サイト(外部リンク)です。

毒猫
毒猫
手数料上限が3%強なのに手数料率が4.5%超えてくるとか普通じゃありえんもんな。
三本松
三本松
囲い込みの口コミとかは探せば結構出てくるので探してみても面白いかもしれません。

囲い込みは一次的には売り主が被害を受けます
自社以外の買い手をシャットアウトするので買い主のアプローチは劇的に減ります。
買い手が限定されるということは必然的に安く売らされる可能性が高くなりますよね。
もちろん売り主には囲い込んでいる事実は隠して買い主を探すわけですが、売り主には「価格や物件スペックのせいで引き合いが少ないかも」みたいな嘘をついたりしてその場をしのぎます。
最終的には「成約のために値下げを」みたいなふざけたアドバイスをしたりするわけです。
これは1つ目のデメリットと同じですね。

利益相反001.jpg※2回目

 

毒猫
毒猫
でも仲介手数料って物件価格が下がると下がる仕組みじゃないの?
仲介業者も損しない?

※仲介手数料上限 物件価格×3%+6万円(税別・物件価格600万円以上の場合)

三本松
三本松
買い主に逃げられて片手になるよりも、多少値下げして両手にしたほうが実入りは全然多いからね。
売り主は一回媒介契約したら一定期間逃げられないし。
毒猫
毒猫
闇深いな…。

売り手にとっては安く買い叩かれる危険性が上がる囲い込みですが、一方の買い主にとってはどうでしょうか?
お察しの通り、内見を拒否されて物件の選択幅が狭まるというデメリットが存在します。

物件Aの元付となっている業者Aが囲い込みをしていた場合を考えてみましょう。
買い主が情報サイトなどに掲載されている囲い込み物件Aが気になって業者Bを通じて内見依頼をしたとします。
物件Aは囲い込まれていますので、当然適当な理由で内見を拒否されます。
このとき、買い主がどうしても物件Aがいいとなった場合には、元付業者が囲い込みを解くのを待つか客付業者を囲い込み業者に切り替えるしか方法はありません。

三本松
三本松
当然買い主が元付業者に直接問い合わせたら内見を拒否する理由はたちまち消えてなくなり内見可能になります。

もちろん業者を切り替えて囲い込み業者にしたところで買い主が支払う仲介手数料が同じであれば実質的に損失はないとも思えます。
しかし全ての不動産屋が仲介手数料を上限金額で設定しているわけではありません。

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仲介手数料を安くしている不動産業者も一定数存在しますので、そういったところに依頼している買い主は業者の乗り換えで余分な仲介手数料を支払う羽目になってしまいます。
そしてがめつく囲い込みを行うような業者は仲介手数料を上限に設定しているところがほとんどですし、さらにはローン事務手数料などの名目で余計な費用を上乗せしてくるところまであります

三本松
三本松
仲介手数料が上限な事自体は合法ですし別に悪いことではありません。
毒猫
毒猫
広告料とかローン手数料とかは流石にクソだと思うけどな!

いろいろ調べて賢く客付業者を選んだ買い主が囲い込みの被害を一番多く受けてしまうという歪な世界が不動産市場なんですね。

毒猫
毒猫
調べない消費者は被害に気づいていないだけという見方もできるな…。

ちなみに筆者が家を買ったときに、担当の不動産営業の人に聞いてみたところ、

担当営業
担当営業
新築戸建てだと体感で3件に1件は内見拒否されますね。

とのことでした。

売り主が独立系の業者で売り主として広告を出していればほぼ大丈夫なんですが、広告主が「媒介」となっていると元付業者が牛耳っていて囲い込む可能性が高くなります。
それにしても囲い込みが1/3というのは当時思っていたよりも酷い数字でしたね…。

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両手仲介についてのまとめ。

  • 通常、不動産取引には売主側と買主側にそれぞれ仲介業者が入り、手数料は2件発生する。
  • 1つの不動産屋が客付と元付の両方を兼ねて手数料を2倍受け取るのが「両手仲介」
  • 単純に収入が2倍になるので両手仲介を目指す不動産営業は多い。
  • 両手仲介自体は日本では違法ではないが、違法行為である「囲い込み」の温床になっている。
  • 両手仲介によって業者が顧客の利益を優先して行動できなくなる事が多い。
  • そのため顧客が間接的な形で損失を被ることになる。
  • 囲い込みは顧客が丸損する仕組みでその不動産屋だけが丸儲けのフザけた違法行為。
  • 囲い込みによって買い手を制限された売り主は売却金額の損失を直接被る。
  • 囲い込みによって買い主は買える物件自体を制限される。

こんな感じです。

両手仲介はそれ自体が顧客の損失とはなりませんが、メリットは一つもありません。
そして両手仲介は「利益相反」と「囲い込み」という顧客にとって損しかないゴミムーブに直結する温床となっています。
消費者的にはあまり歓迎できるものではない、ということはおわかりいただけたかと思います。

正直な話、買い主や借り主として不動産屋に依頼した場合、その業者が元付として扱っている物件を紹介する場合はあからさまに熱量が上がるんですよね。
なので両手の物件はいかにもすごくいいような感じで進めてくるんですが、熱量で物件自体が良くなるわけではありません。
ですのでその熱量に惑わされないように充分注意しなくてはいけません。

毒猫
毒猫
結局不動産とか金融の営業って情報格差で飯食ってるところあるからな。

物件を買うにせよ借りるにせよ、営業担当が必ずしもあなたの味方っとは限りません。
ですので最低限、希望物件の条件や相場くらいはあらかじめ調べてまとめ、営業マンの言いなりにならないための準備をしておくことをおすすめしますよ。

以上です!

 

ABOUT ME
三本松
1級ファイナンシャル・プランニング技能士。 三本FPラボ経営。 北海道根室市出身、都内在住の妻子持ち社畜。 零細メーカーで経理をやりながら野良FPとして勉強中。 無知故に若い時間を無駄にしてしまった経験から、 過去の失敗などで学んだことを記事にして発信しています。
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