昨今はアメリカの政策金利があって日本でも利上げの懸念が囁かれていますね。
これは住宅購入を控えている人にとっては頭が痛い問題かと思います。
今回は、住宅ローンを利用するにあたり避けては通れない「住宅ローン金利」について書き連ねていこうと思いますよ。
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住宅ローンに係る二者択一の金利形態
ご存知住宅ローンには大きく分けて「固定金利」と「変動金利」の2種類が存在し、最初にどちらで組むかを決めなくてはいけません。
変動金利は市場の金利に合わせてその都度(半年に1回が主流)見直しが行われます。
固定金利に比べて金利自体が低いですが、市場金利が上がるとそれに伴って金利が上がっていくというリスクがあります。
一方の固定金利は変動金利に比べて金利は高いものの、契約時に定めた金利がローン終了まで(期間固定の場合はその期間)変わらないため市場金利に左右されず、総返済金額が契約時に確定するため資金計画が立てやすいというメリットがあります。
今まで日本では超低金利の時代が長く続いていたためあまり気にされていなかったのですが、昨今の金利上昇を受けてにわかに騒がれるようになりました。
金利下降局面においては、変動金利はそのまま流れに任せて金利が下がっていくのを眺めていればいいですし、固定で借りてしまった人は多少の手数料を支払って借り換えを行えばそれで済んでいました。
しかし金利上昇局面ではそうはいきません。
固定金利で既に借りている人だけが笑い、変動金利で借りてしまった人は市場金利の上昇に怯え、これから借りる人は一種の博打を打たされることになるわけです。
これから住宅購入を考えている人には
と頭を悩ませている方も多いことかと思います。
金利が上がるか上がらないかなんて誰にもわからない。
現在日本は最低水準の金利ですので、今後これ以上下がることは考えにくいです。
となるとこの先の金利は「上がる」かもしくは「現状維持」の2通りが考えられます。
2023年3月現在、ネット銀行の金利は
- 変動金利 0.4%程度
- 固定金利(全期間固定) 1.5%程度
となっています。
このまま35年間金利が変わらないのであれば変動金利の方が得ですし、金利がかなり上がるようであれば固定金利のほうが得ということになります。
誰しも得したいでしょうから、どちらがいいかというのは非常に気になる問題なのは間違いありません。
しかし、この先金利が固定金利を上回るほど上がるのかどうかということに関して言えば、
この先どれくらい金利が上がるのかは誰もわからない
というのが実際のところです。
つまり、変動が正解なのか固定が正解なのかも誰もわからないことになります。
現状維持派(変動金利派)の意見
- 景気が上向いていないのに金利は上げられない。
- 既に変動金利で組んでいる人(住宅ローン債務者の約7割)の多数が破綻するのが目に見えているので政府はそれを許すはずがない。
- 金利が上がるということは既に景気が過熱しているはずだからそもそも上がっても問題ない。
大幅利上げ派の意見
- 既に諸外国では利上げが進んでいる。
- 日本だけ金利を上げずにいると相対的に円が弱くなるので上げないわけにはいかない。
- 固定金利が上がっているのに変動金利が上がらないわけがない。連動する指標が違うと言ってもただの時間差の問題。
- スタグフレーション食らったら不景気+金利上げのダブルパンチなんて普通にありえる。
両派の意見としてはこんな感じでしょうか。
どちらの意見もありえそうなのがまた悩ましいですね。
結局は「どう転ぶかわからない」というのが結論になりそうです。
必要なのは「金利形態をどうするか」ではなく「いくらなら無理なく返せるか」を考えること。
現在住宅ローンを組んでいる人の7割が変動金利を選択していると言われています。
もちろん変動金利を選んだ理由は「利息が安いから」というのが普通でしょう。
下にへばりついているような低金利市況の中、「金利はこの先下がる!」と読んでいる人はほぼいないと思われます。
つまり、言い方は悪いですが「目先の低金利に飛びついた」ということになります。
無駄な利息を支払いたくないのは誰しも一緒ですし、金利が安いということを判断材料にすること自体は悪いことではありません。
ただ、「変動金利」という名の通り、金利が変動することはローンを組む前に絶対に考えておかなくてはいけません。
例を上げると、
- 5000万円の住宅ローンを35年、元利均等返済で契約
- 変動金利0.4%、固定金利1.5%
という条件だった場合、金利が変動しなければ、
- 変動:月返済額 約127,600円、総返済額 約5359万円
- 固定:月返済額 約153,000円、総返済額 約6430万円
となり、月で3万円以上、通算で1200万円以上の差が出ます。
変動金利を選ぶ人の中には、
という考えで変動金利を選択してしまう人が結構多いんです。
金利上昇が現実味を帯びている今考えるとこれは非常に危険な考えであることがわかるかと思います。
金利下降が考えにくい低金利下では、ほぼ下限の金利が35年間継続するというのは最も楽観的なシナリオですからね。
ですので、これから住宅ローンを組む人が最低限やらなければいけないことは、
固定金利でのシミュレーションを行って
それでも余裕があるかどうかを確認する
という作業です。
その上で余裕を確認できたらそのまま固定金利で組んでもいいですし、変動金利にしてさらにできる余裕部分を金利上昇リスクに備えて貯蓄や運用に回すというやり方もあります。
間違ってもこの金利差で得たお金を消費に回してはいけません。
変動金利は浮いたお金をとっておける人のための金利形態と考えて下さい。
借入時の固定金利を基準にして返済計画を立てることによって、ある程度の金利上昇リスクに備えることが可能です。
(できれば基準金利やそれより高い金利でシミュレートしたほうがリスクヘッジは確実になりますが少し非現実的な試算になる確率が高いです。)
もちろん市況によっては、変動金利が当初の固定金利を上回ってなお上昇する場合もありますが、変動金利をベースにして返済計画を立てるよりは遥かに合理的ですし、余裕部分の貯蓄を使って繰り上げ返済をするなどの対策も立てやすくなるでしょう。
一方、固定金利でのシミュレーションでは返済がきついという場合については残念ながら、
- 出たとこ勝負で変動金利を選択。
- 借入額を減らす。
という2つの選択肢しかありません。
先のことに目をつぶってそのまま契約をしてしまえばこの先数十年にわたって金利上昇に伴う住宅ローン破産の恐怖に怯えながら綱渡りの人生になってしまいます。
それが嫌だから現在悩んでいるわけですから、残る選択肢である「借り入れを減らす」という方法しかなくなってしまいます。
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借入額を減らすための選択肢は限られる。
借入額を少なくするために取れる選択肢は2つ、
- 頭金を入れる
- そもそも予算を減らす
これしかありません。
1つ目の選択肢である「頭金を入れて借入金を減らす」ことについては、たしかに借入金を減らすことができます。
しかし、結局は自分の貯蓄から支出しているので家計が楽になるかという点では疑問が残りますし。
返済額が減る安心感はたしかに心強いのですが、デメリットのようなものもありますので安易に頭金を多く入れるのは考え直したほうがいいでしょう。
一番のデメリットは、手元資金が減って大きめの支出に対応できなくなる可能性が出てくることです。
先々はわかりませんが、現段階では史上稀に見る低金利時代です。
ですので利息軽減効果は思ったほど大きくないにも関わらず、手元の流動資金を取り戻せない頭金に突っ込んでしまうのは良策とはいえないでしょう。
しかも今の時代は繰り上げ返済が無料で手軽にできることが多いので、頭金を入れられる貯蓄があるのであればそのときに繰り上げ返済を行えばいいという話になってしまいます。
頭金の話を長々と書いてしまいましたが、借入額を減らすことで生まれる安心感のために手元資金を減らすのはあまり良策とは言えず、現実的な選択肢にはなりにくいのではないかと思います。
金利で慌てる時点で物件価格が適正でないという残酷な現実。
頭金が現実的ではないとなると残された選択肢は唯一つ、「予算を減らす」ことになります。
結局、現在の固定金利で支払いがきつくなるということは想定の物件価格が高すぎることに他なりません。
つまり、現在の低すぎる変動金利が予算を測る目を曇らせているに過ぎないのです。
不動産屋さんは現在の変動金利でどの程度の物件が買えるのかという前提に基づいて家を勧めてきます。
これには明確な理由があり、概ね下記3点に集約されます。
- 価格が高いほうが物件として魅力があり購買意欲をそそる。
- 価格が高いほうが仲介手数料も多くもらえる。
- 購入後の資金繰りは仲介業者に関係ない。
こんな感じですね。
不動産業者としては目の前のお客さんが自身の仲介で家を買うかどうかが問題であって、購入後のマネープランが破綻しようが損失も責任も負うことはありません。
ですので低い方の変動金利で予算を出し、その中でできるだけ魅力的な物件を紹介してくるわけです。
買う方としては本来耐えうる予算よりも高めのグレードの家を予算内のいい物件と錯覚して「これこそが運命の物件!」とその気になってしまいます。
もうこの時点で将来の金利上昇なんて思考から外れてしまうわけですね。
誤解を恐れずはっきり言いますと、
この世に運命の物件なんて存在しません!
もう一度はっきり言いますと、
この世に運命の物件なんて存在しません!
本来の予算より甘めの予算で物件を探しているのですから、ある程度いい物件なのは運命でもなんでもなく当たり前のことです。
ましてや同時期に条件に合った売買物件なんてそう多くあるわけではないので、その中で1番手が出てきたときに「これだ!」となってしまうのも必然といえば必然なんですよ。
ですのでマネープランを破綻させたくないと思ったら、最低でも現況の固定金利での支払額で返済計画を立ててその金額以下での予算を自分で決めておくことが必要になります。
ここを不動産屋さんに投げてしまうと、支払える額ではなく借りられる額で予算を組まれてしまうので絶対にやっておいて下さい。
と、あたかも多く借りることがステータスのような口ぶりでしれっと予算を上乗せしてきますし、買う側もいい物件を見てしまうとコロッとその気になってしまいます(経験談)。
もちろん、将来的に給料が上がるという保証があれば借りられる金額で予算を決めても問題ないのですが、この不景気の中でそういった人はかなりの少数派だと思います。
楽観的な将来予測をやめることこそが最大のリスクヘッジなのではと最近強く思います。
この判断は正解だったと思います。
ちなみに我が家が予算をカットするにあたり諦めたものは、
- 6畳くらいの自室 → L字型5畳に
- 広めのキッチン → 作業スペース大幅カット
- 駅至近 → 職場近くへのバス停があったので結果オーライ
などです。意外となんとかなります。
いったん高めの物件を見てしまうとそっちの良さに引っ張られて本来の予算での物件がショボく見えてくるので、変動金利での予算算出を行わずに安い物件から見ることを勧めたいのですが、流石にそれは難しいと思います。
なので上で述べた「運命の物件は存在しない」ということは常に意識しておいてほしいところです。
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金利上昇に怯えるなら物件を見直したほうがいい話まとめ。
- 現在の変動金利の安さは当たり前ではない。
- 不動産屋は超低金利の変動金利を前提に物件を勧める。
- 不動産屋は買ったあとのことは関係なし。
- 「借りられる金額=返せる金額」ではない。
- 安い変動金利だけでのシミュレーションは先のリスクを孕む。
- 「固定金利だとしんどい…」という時点で予算が適正ではない。
- 運命の物件なんてこの世には存在しない。
- 高めの予算でいい物件が出てくるのは当たり前。
- 妥協できる部分は妥協して低めの予算を組んでみよう。
こんな感じです。
予算オーバーの「運命の物件」という罠に引っかからないために大事なことは、譲れない条件と譲れる条件を明確にしておくことです。
我々庶民にとって、予算の範囲内で全てを叶える物件というのは基本的に存在しません。
よほどの金持ちでなければある程度理想を捨てる覚悟は必要になってきます。
そしてその予算というのは変動金利だけで計算するべきものではないのです。
もし「固定金利だと支払いキツイから変動にしようかな…」と悩んでいるのであれば、金利形態で悩む前に予算と物件を見直すことをおすすめします。
ってことです。
以上です!